ゲーム 第09話

 「ブランデーに酔ったかな?」

 そうつぶやく宮下君の声が、ひどく遠く聞こえる。ワンピースの服の上から身体をなぞる手のひらは、記憶にある人にやっぱり似ていて、血のつながりってこういうところにも出るんだなと思った。

 ちゅ、とまた唇に吸い付かれる。

 キスが好きなんだな。

 さっきから何度唇を重ねたか、もう数えられない。

 彼の与えてくれる熱は、先ほどのお風呂より、もっと私を熱くさせた。

 ワンピースの裾は、もうとっくに腰の辺りまで捲り上げられていて、いたずらな手が太ももを行ったり来たりして、時々際どいあたりで微妙な動きをしたりする。

「んっ……」

「キスだけで濡れてる」

 含み笑いをした宮下君は、私の耳に口元を寄せて”淫乱”と言った。

 嬲る言葉なのに、何故かより一層の快楽を拾ってしまう。

 太ももを行き来していた手が、下着の脇から秘密の場所にぬるりと押し入ってきて、立ち上がりつつある芽を意地悪く摘んだ。

「い……やっ!」

「洪水になってる、ねえ? これってやっぱりアルコールのせい?」

「わかんな……ああっ、んっ」

 聞きたくない、粘ついた水音が立てられて恥ずかしいのに、腰が勝手に彼の指を欲しがってくねった。すると背中にたとえようのない甘い痺れが駆け抜けていく。

 きっと、私の顔は真っ赤だと思う。

 相変わらず含み笑いをして、宮下君はぐだぐだになった私を抱き起こし、ワンピースの背中のファスナーをゆっくりと焦らすように下ろした。

 ぬぷりと指が蜜を掻き分けながら入り込み、中を穿った。

「あっ!」

「すごく熱い」

 指が掻き回される。ぬちゃりと音がした。

「ん、ん……あぁ……、は」

「いやらしい顔」

「ちが……」

「違わないよ。やっぱりゆきのは処女じゃないんだ」

 ゆきの。

 勝手に名前を呼ばれているのに、それを私はあっさりと受け入れた。ようやくおろされたファスナーの中に手が入り、おしりを思い切りつかまれた。それだけでもう私は我慢できなくなって、宮下君に思い切り抱きついてしまう。

 それを利用して宮下君は、ワンピースを下着ごと足元へ抜き去った。そしてブラジャーのホックも外して、私を抱きかかえたまま、とがった胸の先に吸い付いた。

「あ、は……っ。ああ!」

 腰を抱いていた手がそのまま前に回ってきて、吸い付いていないほうの胸を揉みしだいた。じんじんとするむずがゆい痺れが下半身を襲い、私のあそこはまた新たな蜜で潤ませる。宮下君の左足が柔らかくそこを刺激し、その少し物足りない愛撫がたまらなくて、ずくずくと花園は蠢き、たっぷりと蜜を零した。

 もう、宮下君の身体も熱い。

 むしゃぶりつくように執拗に胸に吸い付いて、痛いぐらいに胸を揉みあげていく。ときどき固くなった先に爪を立てて、ぐりぐりと押したりもする。

「それ……あ、あ、っ……ふぅっ……だめ、だめっ」

「駄目なわけ……ないだろ? こんな、いやらしいの、ゆきのだけだろ?」

「ちがうっ……私」

「なあ……? どれだけの男くわえてるわけ? 男嫌いがどうやって釣ってるの?」

 力任せに胸の先を両方ひねられて、例えようもない官能が私を貫いた。

 真っ白になって、声も出ない。

 ただ身体が、魚のようにびくびくと跳ねた……。

「ろくに触ってもいないのに、イク身体なんて、なかなかないと思うけど?」

 抱き上げられて下ろされたのは、部屋の隅にあるあの大きなベッドだった。どろどろに溶かされて、指の先も足の先も力が入らない。ただ、どうしようもなく欲しいと思った。視線を動かして宮下君を見ると、彼は服をすべて脱ぎ捨てたところだった。

 大人の男の身体だ。

 反り返るあの部分は、記憶にある大きさじゃない……。

 ぎしりと音を立ててベッドに乗り上げてきた宮下君は、私の両足を抱えて、花園に顔を埋めた。

「そ……こ、やめ……っ……あああ!」

 音を立てて吸い付かれて、またあられもない声をあげてしまう。さっきとは比較にならない悦楽がたまらなくて、それでもこれ以上蕩かされるのが怖くて、彼の愛撫から逃れようと必死に身をよじろうとした。

 そんなものは、あってないような動きだったから、顔を上げた宮下君が、濡れそぼった花に指を入れてまた含み笑いをする。わざと音を立ててかき混ぜられ、その音を敏感に拾ってしまう私は、彼が喜ぶような卑猥な動きをしてしまっているらしい……。

「何、今更恥ずかしがってるんだ? な? おれって何人目?」

「しらな……っ」

 ぎゅっと芽をつぶされて、私はまたびくびくと身体をのたうちさせてイった。宮下君の手は私の蜜でもうぐっしょり濡れていて、そのぬめりが柔らかな花をいらうように嬲るように撫で回した。

「言えよ」

「ほんとう……、わた、ひろや……しか、知らないっ」

「広山しか知らない?」

 私は懸命にうなずいた。力が入らないからかすかに動いているだけだろうけど。

 ふ……と宮下君は笑い、また私のそこに顔を埋め、じゅうじゅうと蜜を吸いながら、またはたっぷりと唾液を含んだ舌で、もっと蜜を出せといわんばかりにそこいらじゅうを舐めあげていく。

「ああっ……ああっ…………────っ!」

 止めとばかりに芽に歯を立てられる。同時に伸ばされた手が胸の先をさっきと同じように思い切りひねった。

「──────っっ!!」

 びくっ……びくっとまた身体が跳ねた。

 攻められてイかされた身体は休眠を欲している。それを許さないとばかりに、私の上に身体を乗り上げてきた宮下君が乱暴に唇を重ねてきて、まどろみから無理やり連れ戻した。

「……は…………」

「寝るなよ。寝かさないからな」

 唾液の糸を引きながら、欲に染まった目で宮下君が私に命令した。両胸に指先が食い込んで、痛い。痛いのに気持ちがいいのは……きっとアルコールのせい。彼に口移しで飲まされたその媚薬のせい。

 手を添える必要もないのだろう。固く立ち上がったものを、そのまま宮下君は濡れてずぶずぶになっている花園に押し入れてきた。目だけはじっと私を見つめたまま。

 ゆっくり、ゆっくりと押し入ってくる。

「はぁ……ん……ん……あ……う」

「確かに、男を何人も咥えてはいないみたいだな。……きつい」

 宮下君は満足そうに笑いながら、根元までずっぷりと押し込み、私の閉じられない唇を舌を出して舐めた。獣じみた息を繰り返して、もう限界なんて超えている私の身体をまた揺さぶり始める。声なんて出す力はないと思っていたのに、ずんずんと押し上げられる快楽に声は生まれてくる。

「ああ……っ……あああっ! ァあ……!」

「そんなに……締め付けるな……よ……」

 胸を揉みしだかれながら、腰を強く抱かれ、宮下君に汗でぬめった身体を密着させられて嬲られた。幾度むさぼっても足りない快楽を宮下君は求めてきて、奥へ、さらに奥へ、自分の欲を押し込んで、めちゃくちゃに私を揺さぶった。

 雨が窓を叩きつける音が、はるかに遠くだ。

 宮下君の荒い息のほうが身近で、しつこいぐらいにいやらしい言葉を吹き込むから、そうなっても仕方がない。

「あぁ────っ」」

 また来る……と思った瞬間に、私は宮下君をきつく締め上げた。吸盤のようなそこが、熱く固い宮下君の欲を小刻みに貪欲に、早くお前も密を出せといわんばかりに吸い上げる。宮下君は目を瞑って、強い快楽を耐えて、いったん動きを止めた。

 その顔は職場では見たことがない、壮絶な色をまとっていた。

 快感に染まる端正な顔立ちは、とても綺麗だ……。

 でもそれも短い間で、すぐにまた嵐に引きずり込まれた。

 狂ったように押し上げられて、踏みしだかれるように身体を蹂躙されて、何もかもが吹き飛んでいく。

「ああッ……はあん……ああ! ああッ! あああっ!」

「呼べよ…………っ 優って」

「や……あはぁんっ!」

 汗でぬめる白い胸に、宮下君が乱暴に吸い付いた。

「呼べよ!……っ」

 その命令するような願いに、いつしか宮下君ではなく広山君に抱かれている錯覚に陥っていた。

 あれは、同じように雨が降った夏の日。

 いじめで傘を盗まれ、土砂降りの中下校していたところを、広山君が後ろから傘を持って追いかけてきて、自宅へ招いてくれた。

 何がどうなって、抱かれる雰囲気になったのかはよく覚えていない。私はあの時風邪を引いていて熱で朦朧としていたから。

『名前を……呼んで?』

 広山君が、そう言った。

「ま、優……っ」

 飛び出した声に、宮下君の動きがまた早くなった。もうその動きに私はついていけない。もみくちゃにされながらも懸命に優と呼んだ。ろれつが回らない舌で名前を呼ぶ私を、宮下君は狂ったように貫き攻め続ける。

 ぴぴ……と電子音が鳴った。

 どこかにおいてあるスマートフォンが、メールを着信したらしい。

 それと呼応するかのように宮下君は達した。

「く……っ!」

 思い切り私を抱きしめて、宮下君は自分の蜜をドクドクと流し込む。私はそれを渇きに飢えていた獣のように喜んで飲み干していく。

 疲れてたまらないのに、じんじんと甘くしびれる花園は、それでも宮下君がほしいと訴えかけた。

 熱くて熱くてたまらない、いい加減に涼しい夜に浸りたい。

「まだ寝るな。ゆきの」

 

 宮下君は、眠りに入りかけていた私を揺り起こし、再び弄り始めた。

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