平凡非凡ボンボボン 第04話

 ま~た来やがった。

「おい、僕をスルーするなんてどれだけ素晴らしい自分をアピールしてるんだよ?」

 その言葉そのまんまお前に返したい。面倒くさいなもう! てかさ、なんでわざわざ昼休みのバレー部の部室前にこいつが居るんだよ、綾小路麗ーっ。無視無視無視に限る。こいつはいない存在しない~。でも部室前の廊下の窓際の壁にもたれていた綾小路は、僕が部室の鍵を開け出した途端に近寄ってきた。ち。仕方なく僕はドアを開けながら綾小路に振り向いた。

「何か用?」

「大有りだよ」

「何? 手短にお願いしますね」

「これ」

 ぺらぺらの紙を渡された。なんだかこれ見覚えがあるな……って、入部届ぇ!? 

「……は?」

 僕は驚きすぎて、入部届を持つ手を震わせてしまった。綾小路はそんな僕に満足したらしく、綺麗な面に満面の笑みを浮かべた。

「僕もマネージャーになる」

 誰か嘘だと言ってよおおおおおっ!!!(ムンクの叫び状態の僕を想像してほしい)

 放課後、やっぱりバレー部の部員達はマネージャーの作業をこなす綾小路を見て驚いていた。恐ろしく似合わないのにそつなくマネージャー業をこなしているから余計に違和感ばりばりだ。坂田先輩はマネージャーが足りなかったから大喜びだ。柳沢主将は本当は嫌だったらしいけど、マネージャーが足りないから絶対に欲しいと坂田先輩に懇願されて仕方なく入部を許可したそうだ。こういう時にこそ鬼の柳沢を自覚してくんないかな!

「遅い!」

「へ?」

 休憩のお茶を入れるのに手間取っていた僕の手からお茶缶を奪い取った綾小路は、プロですか? ってな無駄の無い動作でさっさとお茶っ葉をやかんに入れていく。えー? 計らないで大丈夫なの?

「計らないでお茶がいれられるの?」

「馬鹿。いちいち計っていられないよ。さっさと入れて適温にしとかないと皆ろくろく休めないだろ」

 適温? なんてもんがあるのか。綾小路は僕の視線に気付いて目線をあげ、呆れたようにため息をついた。

「熱湯でガンガン煮出すのもあるけど、これは違うだろ? 若い奴は薄い茶で冷めてる方が好きだし、今から作っとかないと間に合わないんだ」

「へえ? 茶にくわしいな。坊ちゃんなのに」

 僕が心底感心していると、背後から坂田先輩が言った。

「綾小路君は、もう表千家の白流の名取だものね。将来家元になるとか聞いてるわ」

「……それはわかりませんが」

 当然といばりちらすのかと思ったけど、不思議と綾小路の顔は固かった。家元というのは何かと騒動があるからこいつも大変なんだろう。休憩のホイッスルが鳴ったので、僕達は一斉にタオルを持った。田中先輩は相変わらずまっさきに柳沢主将のところに走っている。すげえなあ、あのアタック力。胸がちくりと痛んだのを無視して、先輩方にタオルを渡した後お茶を配って歩く。

「遊もマネージャー業が板に着いてきたんでない?」

 仁志が上手そうに茶を飲みながら僕に言う。こいつは今度の練習試合に出る事になったのでとてもうれしそうだ。

「まだまだだよ。お前、セッターで出してもらえるからって浮かれて転ぶなよ?」

「そんなへましないっつーの。松高の女どもを俺に注目させる絶好の機会だってのに」

「馬鹿。大半は主将目当てだって」

「ち」

 むくれている仁志から離れ、僕は隅っこで一人茶を飲んでいる主将を見やった。右足はまだ治ってないみたいで目線がそこに落ちてる。大丈夫かな……。今日の主将は僕をからかってくる風もなく、あまりコートにも入らない。まだ皆気付いてないみたいだけど。

「おし、グループ練習開始」

 キッチリ10分後主将が立ち上がった。部員達は皆グループを組んで練習を始める。僕達はお茶碗を回収してカゴに放り込んだ。やっぱり綾小路は手馴れていて僕よりも手際よくやっていく。まじかよ、僕のがほんの少し先輩なのに負けてる。があああん……。

 これは主将が嫌がっても綾小路を退部にはできそうもないなあ。……にしても余程主将が好きなんだな、御曹司がこんな雑用をするとは。

「これ、どこで洗うのさ?」

「あっちの部屋」

 綾小路は美麗な女のような外見なのに怪力らしい。田中先輩と坂田先輩が二人がかりで持つ茶碗のカゴを、一人でひょいと担いでずんずん歩いていく。僕はあんなふうに歩けないな。あれって余裕で15キロはあるような気がする……。田中先輩が男手があると助かるわとサボる気満々に言い、坂田先輩からお小言を喰らった。

「私達はボール渡しに行って来るから、綾小路君と篠原君は掃除をお願い」

「わかりました」

 どうやら僕は綾小路に仕事を教える役目らしい。まあ一通りは覚えてるからいっか。ヘボニャーの条件、人並みに一応いろいろできる、だからな。とはいえすぐに追い抜かれるのがヘボニャーの運命でもある。綾小路の方が明日は上手にできるだろうと想像つくの悲しい。

 ……にしても。

 水が流れる音と茶碗が触れ合う音がするだけで、こいつってばさっきからなーんにも話さない。これはきまずい。何か話してくれないと空気が重い。確かに愛しの柳沢主将の恋人? の僕に話しかけるのは苦痛だろうけどさ! でも話しかけるんじゃねえよな空気が綾小路から発散されていて、開きかけた口はまた閉じてしまった。この前みたいにキャンキャン言ってくれたほうが楽だよ~~~っ!

 綾小路は茶碗も洗いなれているようで、僕が一個洗う間に三個洗っていく。もうなんか嫁に欲しいよなこういう人間。男でなくて普通の家の女の子だったらなあ。あと性格が優しければ……って何考えてんだ僕は。

 あっという間に茶碗を洗い終わってしまい、二人でそれをふきんで拭いて戸棚にしまった。

「次は部室の掃除だけど……」

 綾小路は無言でうなずいて、僕の後を付いてきた。やっぱり何も言わない。キャンキャンうるさいのも嫌だけどなんか気になるなー。二人きりになった途端に黙り込むのは勘弁だよ。部室に入り、窓を開けようとした僕は、背後で鍵の掛かる音を聞いた。へ? なんで鍵なんか閉める必要があるんだ?

「窓開けたいからそこも開け……っ!」

 その先は言葉にならなかった。だって、唇が綾小路の唇に塞がれていたから。ぎゃおええええええいっ。何すんじゃこいつうううううっ。

「んうっふぅう……!」

 噛み付くようにキスをされ、そのまま床に押し付けられた。ちょっと待ていっ! 一体何が起こってるんだ今。もしかして僕は寝てるのか? これは夢だろう? 世界史の辻本の授業が眠すぎて寝てしまっているに違いない。早く目覚めるんだ僕! これ以上男にキスされてたまるかあーっ!

「!」

 綾小路は主将と同じように僕の両手を上に一まとめにして床に押し付け、体操服の裾から僕の素肌へ手を滑らせてくる。ぎぇええっ。止め、止め! 汗かいてるし汚いしってそんなんじゃない。腰を押し付けるなっ。今日は暑いんだから野郎とおしくら饅頭は嫌なんだよ! ってちがーう。なんでこいつが僕にこんな事をするんだ。こいつが好きなのは主将だろうがあっ。

 でも混乱している僕をよそに、キスを終えた綾小路はいやらしい糸を引きながらにんまり笑った。美麗な顔で至近距離で笑われるとド迫力だ。力がわずかに緩んだ隙に逃げ……。

「あ、はあっ!」

 僕の胸に到達した綾小路の指が、いきなり乳首を抓りやがった。びりびりとした快感がまた襲ってきて、女みたいな声が出てしまう。

「可愛いな、君はやっぱり」

「ぼけ! 男が可愛くて……、あ、止めろ……! あ……あんっ!」

 頬をべろりと滑った下が耳の縁を舐めた。しゅ、主将が開発した僕の性感帯が敏感に反応する。止めてくれーっ。あと噛むな。胸つねるな引っ張るな撫で回すなあぁっ。

「本当に淫乱なんだ。主将の恋人だけあるな……」

「ちょ……待て」

「なんだよ」

 僕は息も絶え絶えに万歳させられたまま、必死に喘ぎ声以外の声を出した。

「おま、主将が好きなんじゃ」

「好きだよ」

「じゃ、どして、……僕を」

「だって可愛いんだもん」

 でかい目を欲望でらんらんと光らせる美形が怖いっ! うっひゃあーーーーっ!! なんか、なんか、巨大な大蛇を思わせるうっ!

「かわ、可愛くねえよ! 第一男が可愛くてどうすんだっ……ひいっ」

 綾小路の意地悪な手がカンペキに立ち上がってる僕のモノを握り締めた。絶妙な力加減で気持ちよくてたまらない。うっそおおお。

「主将が好きだったんだけどさ、主将にやられてる君が可愛すぎてさ……。ふふ、感じてるのに感じてませんって我慢する顔がたまらなくいいよ、遊」

 勝手に名前を呼び捨てにすんなホモ! と叫びたかったけど再び唇をふさがれて口腔内を舌で弄られる。手は容赦なくズボンを引き摺り下ろして立ち上がった僕のモノを扱いた。

「んんっ! んん!」

 熱がそこに集まって、綾小路の手も熱い。足に力が入らなくなって、腰が快感で痺れていく。信じられない。僕って好きでもない相手にやられても反応するんだ。まじかようっ。てか、できるなら女の子のほうが断然いいのになんで野郎に押し倒されてばっかりなんだっ。執拗に重なるキスに唾液がつうっと顔の横に滴っていって気になる。でも拭う事はできないし、まるでくもの糸にがんじがらめにされた蝶みたいに動けない。

「ふう……うーっ……む……う……うう」

 僕のモノは完全に綾小路にイかされそうになっていて、さっきからくちゅくちゅと先走りの音がし始めている。なんとか気をまぎらわせようとするのに、綾小路の舌が絡んできてその動きで背筋が甘く蕩けてしまう。こいつって……どう見ても女役そうなのに、男役ばりばりじゃあ!(作者注:遊はネコタチなどの言葉をしりません)

「はあ……」

「じゃあこっちに行こうかな」

「こ……ひいっ!!!」

 やっと唇が離れたと思ったら、今度は直接僕のモノに吸い付きやがった。生ぬるい熱でまた新たな血が下半身へ集中していく。

「やめろおおっ」

「むい……いっひゃいひっえ(無理、一回イって)」

「いや……、ぁ……ひ……はァ……駄目! あ、あぁっ」

 ぬるぬると竿を滑る唇が嫌でも射精を促す。イきたくないーっ。でもたまらなく気持ちいいから止められない。綾小路の手はいつの間にか僕の両手を解放して、僕の体を撫で回している。今なら逃げられるのに、多分もう無理。イきたくて、イきたくて……。

 バン!

 物凄い力でドアを叩く音がした。同時に僕は達してしまい、綾小路が僕が出したものをごくごくと飲み下してさらに吸い上げる。その刺激でまた僕はビンビンに自分のモノを固くしてしまう。

「開けやがれ綾小路! てんめえ……遊にエロい事してやがるだろっ」

 主将だ。来るのが遅いっつうの……。ああ! またイっちゃう! 一回目よりあっさりと達した僕はそのまま再び綾小路に吸われてしまった。名残惜しげに綾小路は僕を解放する。

「んもう、主将ってば来るのがはやーい……」

 ぼやけた視線の先で綾小路が自分の濡れた唇を舐め、色気を2000%放ちながら僕の服の乱れを直していく。駄目だ……もう動けない。つうか男二人に襲われる僕のヘボニャー人生は、どこへ進んでいくのだろう。完全にお婿には行けない気がする

 主将の怒鳴る声を聞きながら、疲れきっていた僕はそのまま寝てしまったのだった。

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