平凡非凡ボンボボン 第06話(完結)

 押し黙ってうつむいた僕の頬に、先輩の手が優しく添えられた。うおおおお、これ以上赤くなるのは勘弁してくれ僕の顔よっ。恥ずかしいんだって! 

「遊」

 しゅしょーっ!!!!! 貴方もその腰が蕩けるような激甘ボイスを止めてけろ! 聞いてるこっちがこっ恥ずかしいから! 僕はホモじゃないはずなのになんでこんな事に……。ど、どうしたらこのしっとりムードをやり過ごせるんだ。裸踊りしたらいいのだろうか。それはヘボニャーの流儀に反するよ。目立ったり頭が宇宙の果てのイスカンダルに行くような行為は、非凡とアホの領域だもん!

「遊」

 主将が僕の頤を上に向けて優しく口づける。恥ずかしいけど我慢。一方で大喜びしている僕はなんなんだ。跳ね除けろよ主将の手をさ! でも僕の腕は勝手に主将の首に巻きついていく。主人の意思を無視するとはどーなってんの僕のヘボニャーボディーはっ。

「そこ、は」

「もういいだろ? ずっと我慢してたんだ」

 主将の指が男同士ならそこに入れるという場所をさ迷う。恥ずかしくて恥ずかしくてどうにかなりそうな僕なのに、ずっと我慢してたんだという主将のはにかみを含んだ声に陥落した。そっか……強引だけどいろいろ我慢しててくれたのか。そーだよな、初日なんてあのままやられそうな勢いだったし。主将は今日に寝転んだまま用意していたヌルヌルクリームを僕のそこにたっぷりとつけて刺激する。媚薬でも入っているのか、塗られた部分が熱を持ったようにかゆくなってきた。当然僕は喘いで喘いで主将を喜ばせてしまう。

「やああ……、それ、なんかかゆい」

「だろ? とっておきなんだこれ。お前にしか使った事ない。あ、言っとくけど俺がセックスするのはお前が初めてだぜ? 俺はもともとそーゆーの興味ないからな」

 ……明らかな嘘をつくなっ! と叫びたいのに僕の口から飛び出すのはみっともない喘ぎ声で、男としての僕の尊厳はなんかどっかに行ってしまった。ああ、さよーならー。っていまさらか。

「ああ……はう……んっ」

 指が入り込み、僕のそこを柔らかくほぐしていく。先輩は僕の胸を舐めては首筋に吸い付いて、きつく吸う。今の季節は止めて欲しい……隠せないってそこは! 包帯巻いたって部員は全員わかっちゃうから! れろれろと下が首筋で踊ると、またむず痒さがそこから下半身へ直撃する。僕は疼きを逃がそうとしてばたばたして、主将に強くベッドに押し付けられた。それがうれしい僕はもうさっきまでの僕じゃない。もっといろいろして欲しいな……。ちゅばちゅばと僕を舐める主将はとても優しい愛撫で、いつもにまして慎重だ。愛されてんだなーと女みたいな考えになった。

 まー……いいじゃんよ。女役だしさ。男役は無理なのかって? 考えてもみてよ、主将みたいなでかい男に「ああん遊、早くいれてええーっ」なんて気持ち悪い声で言われたら皆引くよ!

「ひい……ああぁーっ!」

 主将の指が男がめっちゃ感じる箇所を擦ったせいで、びりびりびりと快感が身体に走った。立ち上がっていた僕のモノが一気に固くなる。それを今度は優しすぎずきつすぎず扱かれて、出したいのに出せない快感で僕はうねうね動いた。めっちゃやらしいと思うけど動かずにいられない。

 じゅるじゅるじゅるっ……、ちゅうううううっ!

 吸われて舐められる乳首が超いやらしい。

「あ、ああっ、しゅ、……しょおおっ。くぅ……」

「いい顔するよな遊。俺さ、お前が入学してきた時から目をつけてたんだぜ? 部に入ってきた時は狂うかと思うくらいうれしくてさ、もう何回お前をオカズにして抜いたかわかんねえくらい」

「お……? あ、そこは……んんん……ンうっ……ああぁ」

「男が女みたいに喘ぐなんて引くと思ってたけど、お前だともっと喘ぎさせたくなるんだ。気持ちいいんだろっ? なあ……?」

 しゃべっていた主将が突然僕のモノの先っぽだけを口に含んで強く吸った。同時にあそこに入っている指がいいところを強くこすり付ける。

「……────っ!!!!」

 身体が大げさなくらい震えて……気持ちよすぎて……もうわけわかんない。びゅくびゅくと僕のお腹に自分の出した白濁が吐き出され、主将がそれをうれしそうに塗り広げていく。なんなのこの変態プレイ……。主将は服を脱いで僕と同じ全裸になった。主将の身体はしなやかな筋肉に包まれたカッコイイ身体だ、僕みたいな生っちろい華奢な身体じゃない。

「遊」

 僕の両足を蛙のさかさバージョンに折り曲げ、ゆっくりと主将が自分のモノを押し込んできた。熱くて痛くて、ぎくりとして腰を退く僕を許さず、主将は足を抱え込んだ手で腰を掴む。主将の身体も僕と同じくらい熱い。押し上げられるその感覚にめまいが起きそうなほどの快感が生まれる。きっと媚薬が効いてるんだろうと思う。ぎちぎちぎちって音がしそうなくらい、あそこが広がって……。

「ううう……っ」

 主将が全部僕の中に入った。二人とも息がぜえぜえ言ってる。僕は疲労困憊のぜえぜえだけど、主将は欲に煽られたぜえぜえだった。主将は、ごめん今日は我慢できん許してくれと言い、容赦なく腰をがんがん突き上げ始める。

「ああっ……しゅしょっ……、きつい……っ、あうっ……、ああっ!」

 ものすんごい濃厚キスが喘ぐ僕の唇に重なる。呼吸困難になるってばと思うのも一瞬で、それはすぐに快感に変わる。唇が離れて見上げる先輩は壮絶に色っぽい。普段からカッコイイ人はこういう場でもカッコイイらしい。腰を掴んでいた手が離れて、今度は両方の乳首をぎゅううっと的確な強さで捻られた。

「ちょっと、ううううっ……はうっ、ン、ン、……はぁ……んっ」

 ぐっちょり媚薬で濡れているあそこが、いやらしい水音をぐちょぐちょ立て続け、僕はすべりがよくなった主将のそれに服従させられた。ずっと感じるところを擦られ続けると、下半身が蕩けてなくなる錯覚が起きる。猛烈に熱くて滑ってるからあるってのはわかるけど……。

「くそ、良すぎて持たない……」

 がんがん突いていた先輩が苦しそうに言い、やがて僕の中に白濁をドバドバと出した。それすら気持ちが良くて、僕は今日で二回目の昇天をしてしまった。

 

「はあ……? 今度の練習試合対策?」

「そうだ。バレーボール部は強いけど柄が悪い学校でさ。あそこと対戦するチームは必ず試合までに怪我をさせられるんだ、上から植木鉢だの、車と接触だの。だからマネージャーの坂田と考えて、俺が足を痛めてるって事にしたんだ。怪我させられない為に」

「なんでそれを僕に言ってくれなかったんです?」

「ごめん。本気で心配している奴がいないと相手がごまかせなかったから。……信用してなかったわけじゃないんだ、信用してたからそれに甘えた。悪かったよ」

 先輩に冷め切ったご飯を食べさせてもらいながら、僕は複雑な心境だった。なるほどなあとは思うけど。確かに僕が知ってたらここまでリアリティは出せなかっただろうし。

「綾小路はお前に迫るし、本当の事は言えないしでいらいらした」

「はは……綾小路は多分気の迷いかと」

 僕が笑うと、主将はめちゃくちゃでかいため息をもらして、僕に食べさせようとしていたポテトコロッケを皿に戻した。ちょっとそれ食べたいよ。僕は主将にむさぼられすぎて足腰立たないんですけど? でも主将は僕に背を向けてずんずんと窓際に歩いていく。何怒ってるんだよ! 昼間に襲われたのはまったくの予想外だったのに。わけわかんない人だな。

「平凡なのがあの学校で一番もてるって、なんでわかんねーかなー……」

 こつんと窓に額を当てて主将がそうつぶやいたのは、僕の耳には聞こえなかった。

 練習試合はもちろん僕達のチームの大勝利に終わり、おおいに盛り上がった。でもさらに主将が僕を完全に落とした宣言をしてくれたせいで(体育館の観客もいる中で!)、女の子達の金切り声みたいな悲鳴が上がった。人前でお姫様抱っこ&キスされた僕は、思い切り主将の頬を殴ったけど、それすら変態の主将はうれしいらしかった。

 仁志がキラキラした目でなにやら尊敬したように主将を眺めた。

「さすがだな主将……ここまで男らしいとは思わなかった」

 僕はここまでお前の頭がアホだとは思わなかったよ!

「くやしい、負けないから!」

 田中先輩、その鬼女の目つきが怖いから男が寄りつかないんですよ……。

「へえー。でも諦めないからね」

 諦めてくれ綾小路。さらに話がややこしくなるから! ばちばちと主将と火花散らさないでくれよ。ヘボニャーの僕は目立ちたくないんだ。なんでわからないんだよどいつもこいつもおおおおおっ。くそ、主将に取られた。という悔し紛れの声は聞かなかった事にしよう。僕は知らない、何にも知らない。

 はあ……この先僕はどうなるんだろうか。ヘボニャー人生は平凡ゆえに食われる運命なのかもしれない。……なんて思うわけないだろーっ! 絶対に逃げ切ってやるからな!

 と、誓っている僕を見て、坂田先輩が哀れみの目で「無駄な足掻きね」とつぶやいた……らしい。

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