清らかな手 第1部 第02話

「あ……く……っ」

 その白い顔を赤く染めて、雅明はアレクサンデルが与えてくる快感に耐えていた。ベッドに腰掛けた彼の膝の上に乗せられて背後から撫でられているだけなのに、ゾクゾクとしてくるのだ。

 照明が極端に落とされた暗い室内で、アレクサンデルと雅明の白い肢体が浮き上がって見える。

「……男と寝たことは?」

 熱い吐息と共に耳のそばで聞かれ、ぎくりと雅明は身体を強張らせる。その様子にアレクサンデルは満足そうに含み笑いをして、ちいさな乳首をぎゅっと摘んだ。

「はあ……」

「素直に反応する、これはいい」

 やわやわと双球を揉まれると、それだけで熱くなってくるのが判り、雅明は頭を振った。男に感じるなどおかしい。

 闇の世界に引きずり込まれてから、やたらとこういう事を要求する男達が群がるようになった。ボスのトビアスを始め、仲間にもこの手の男は多い。気持ち悪くていつもきっぱりと拒絶する雅明にトビアスが困ったように言った。

『そのうちその潔癖症で仕事に支障をきたすぞ。命もあやうくなるかもしれない』

 関係ないという雅明にトビアスは首を横に重々しく振った。

『これだけは嫌だというものは弱点だ。今に後悔する。気をつけるんだな……』

「一回抜くと楽だろうから、抜くか」

 もうこれ以上されてたまるかと、かすかに残った理性が拒絶しようとするが、手錠が小さな音を立てただけだった。その時初めて雅明は自分の左腕に注射の後があるのを発見した。

(くそ……、気絶している間にやられたか)

「そのうち、もっと効いてくるよ……」

「な……に、を」

 しつこいぐらい左の乳首を摘まれたり、押されたり、揉まれたりして、女でもないのに甘い痺れがそこから広がり、雅明は辛そうに顔をしかめた。長い銀色の睫毛を瞬かせている雅明を背後から楽しそうにアレクサンデルは覗き込んだ。

「君のボスも使ってるんじゃないかな? 気持ちよくなる注射」

「麻薬は……」

「ああ、確かトビアスは麻薬は嫌っていたな……。じゃあ初体験なわけだ」

 アレクサンデルは、湧き上がる官能の炎に耐えている雅明の頬を、横から赤い舌を出して舐めた。その舐めまわされる舌のうごめきが淫靡で、雅明は身体をよじらせようとするが、もう力が入らなかった。

 座るのも困難になった雅明をベッドに横たえると、アレクサンデルはベッドの脇にあったコップの水を含み、口移しで雅明に飲ませた。だがそれすらも、もう満足に嚥下されず大半が口の端から流れていく。

「安心して構わない。弱い弱い麻薬だからね。そう毒ではない」

「はっ……」

 すらりとした太ももを撫でられただけで雅明は敏感に反応して、アレクサンデルを楽しませた。霞がかった茶色の瞳は潤み、吸い込むようにアレクサンデルを見つめる。

 アレクサンデルは自分のモノと雅明のモノを重ねて握り、やわらかく刺激する。

「あ、あ……」

「男を煽り立てる顔をするね。売ったらどれくらいで売れるんだろうね君は」

「はう、ああ……ん……んん……あああっ」

「どんどん固くなって来たぞ……。ずいぶん小さいな君のは、ああ、君のここは東洋人のようだね、東洋人にしては大きいか……。ふふ。面白いアクセサリーだ」

 固くなって熱いそれを激しくこすられはじめ、雅明は狂ったようによがりだした。女性的な容貌のため、アレクサンデルは美女を犯している気分になっていた。雅明の声がテノールにしては少し高いせいもある。銀色の茂みをふさふさと触りながら、アレクサンデルは美しい雅明にもっと痴態を取らせたい欲望を膨らませる。

「く……う」

「なかなかイかないね。あれを打たれてもそうは改造されないようだ」

 先走り液が先端から流れ、それをアレクサンデルは肉棒全体になじませるように塗り広げる。離していた自分のモノもついでになじませるように絡みつかせると、その熱さがたまらないのか雅明の身体が跳ねた。

「仕方ないねえ、口で可愛がってあげよう」

 ぬるりとした温かさに包まれ、それだけで雅明はイきそうになった。だがひとかけらの理性に縋って懸命にこらえる。男になどイかされてたまるものかと。だが現実は巧みなアレクサンデルの舌技に翻弄されている。ぬるりぬるりと舐め上げられ、唾液をたっぷり含んだ舌で裏筋を舐められるともうたまらない。

「ああっ、あ、あ、やめろ……ああっ」

 ぴちゃぴちゃと唾液の音がする。アレクサンデルの唇が先端のふくらみを吸い上げて口腔内に含む。そしてアレクサンデルの舌が小さな口を押し付けられ、やわらかく突いてくる。射精をうながすその刺激に、雅明は手錠にガシャガシャと悲鳴をあげさせて悶えた。

「うう、やめろ、やめろ……駄目だあっ」

「さらに膨らんだぞ? もうすぐだな……くっく」

 双球をやさしく触りながら、雅明のモノをアレクサンデルは強く吸い上げる。

「ぐ……う……う」

 がたがたと震え始めた雅明に、もう限界が近いなとアレクサンデルは先端だけを口に含み、さおの部分を擦る速度を速める」

「やめ……、やめ、あ、……あ、あああっ……」

 アレクサンデルは口を離し、雅明のモノを雅明の腹に向かわせた。瞬間に白いものが勢いよく吐き出されていく……。それは白い腹をさらに白く汚していった。雅明のものは何回もびくびくと動いては射精を続けた。

「あ……あ…………」

 乱れた荒い呼吸を繰り返しながら、雅明は脱力していく。ついに男にイかされてしまったのだ。激しく暴れたために手錠の後が白い手首に赤くついている。

 吐き出されたものを雅明の身体に塗り広げて、アレクサンデルは打ちのめされている雅明をさらに地獄に叩き落とす台詞を言った。

「……男でも、男を受け入れる穴があるんだよ」

「…………」

 そんなものはあるわけないと雅明は弱弱しく首をふる。もう安全だと思ったのか、アレクサンデルはベッドの端に置いてあった服から鍵を取り出して、雅明の手錠を外した。その手はだらりとシーツの上に落ちる。打たれた注射がとてもよく効いているらしい。

 汗をにじませている雅明に唇を重ねると、その口腔内に舌を侵入させる。重なる雅明の身体が男にしては肌理細やかな肌で極上の心地をアレクサンデルに与える。

 唾液を流し込んで雅明に飲ませると、アレクサンデルは唇を離した。その間もアレクサンデルの手は雅明の身体を楽しむように撫で続けている。

「ひとつはこの唇……」

 そう言ってアレクサンデルは雅明の唇をぬるぬると舐め、さらに銀糸をひいているその周囲を舐めた。悩ましげな吐息が雅明の唇から漏れ、自分の愛撫に夢中になっているなとアレクサンデルは唇を弧に描く。そして腰の辺りを撫でていた手をゆっくりと背中に回し、ひきしまっている尻を撫で下ろしていきながら、その谷に指をすりこませていく。

「あああ……っ」

 アレクサンデルの胸の中で雅明が喘いだ。すっかり自分に従順になった雅明にアレクサンデルはさらにひどい事をする。

「もうひとつは、ここだよ……」

 太い指が、雅明のアヌスを捉えて、すこしその先端を押し込んだ。

「そ、こは……」

 薬のせいで上手く舌が回らない雅明が身体を緊張させた。だがアレクサンデルはそのまま指を押し込んで内部をかき回す。

「きたな……い」

 止めて欲しいと言うように首をふる雅明の頬をべろりと舐め、アレクサンデルは誘うように言う。

「君は知らないんだね。女でもここに入れられるとヒイヒイよがるのさ。ゆっくりとほぐしていけば極上の穴になる」

「嫌だ……」

「そういうわけにはいかない。君にはすべての快楽を経験してもらわないとねえ」

 朦朧とした意識の中で、雅明は何かをそこへ塗られるのを感じ、ついで、そこが燃えるように熱くなり腰を浮かせた。

「な……に、を」

「何って、やわらかくしておかないと裂けるからね。もっとも気持ちよくなる成分も入っているけど、ああ心配ないよ、中の掃除は君が寝ている間にやってしまったから」

「…………」

 透明なクリームを小瓶から取り、それをアヌスに人差し指で塗りつけながらアレクサンデルが笑った。

「言い忘れていたけどね……、君がここにさらわれてきてから丸三日経っているんだよ。君の相棒は地下牢で最初うるさかったよ。今はおとなしくしているがね。さすがに真っ暗闇に三日間は堪えるだろうね、一人っきりだし」

「うう……う」

 人差し指がやさしく撫で回してくるため、その成分が良くわからないクリームのせいもあり、なんともいえないうずきがアヌスからも湧き上がってきて、雅明は歯を食いしばっている。アレクサンデルはその雅明をうつぶせにすると大きく足を開かせ、羞恥に震える背中に口付けしながらマッサージを再開する。

 ヌプヌプと指を出し入れされると、耐え難い快感が下半身を疼かせる。シーツを握り締めて雅明はやり過ごそうと必死になった。だがアレクサンデルの手が、指が、さらなる刺激を与えてくる。再び双球をやわらかく握られ、雅明のものが立ち上がり、固くなっていく……。

「くう……はあ……、ああ、ああ、やめてくれ……」

「綺麗な男が快感に顔を歪める様はいいね、高揚した気分を与えてくれる」

 くっくと淫湿な笑いが響いたが、それを侮辱ととる余裕はもはや雅明にない。

「君の相棒は、君におかしなことをさせないという約束で大人しくさせたのだよ。くく」

 その約束は最初から守られていない。そう部下に言わせた時からアレクサンデルは雅明の身体をすでに堪能しだしていたのだから。捕らえた時からあまりの美しさに自分のモノにしたくてしかたがなかったのだ。館に連れて帰るなり雅明を自分の部屋に連れ込み、剥ぎ取るように服を脱がして裸にした。

 男にはめずらしい真珠色の肌が、彼を狂喜させた。

 目をさまさないように薬を打ち、あらゆる淫らなことをやった。身体中を舐め尽し、口付けを繰り返して口腔内を犯し、何度も射精をさせ、そして……。

「もう君のアヌスはとっくにいただいていたんだよ。雅明」

 うつ伏せになっている雅明にのしかかり、アレクサンデルは自分のモノをゆっくりとアヌスへ押し込んでいく。なんの抵抗も痛みもなく、あるのは快感だけだ。

「あああ……ぐう……は!」

 快感に震える雅明の耳はアレクサンデルの舌を差し込まれ舐められていく。腹にアレクサンデルの手が回され、右手が雅明の固く張り詰めたものを、左手が度重なる愛撫で赤くなった乳首を撫で押して摘まむ。

「喜びたまえ、気を失っている間に気持ちよくなる身体に変えてあげたのだからね」

 ゆっくりと抜き差ししながら、口をわななかせて涙を流す雅明に、アレクサンデルはにやにやと笑う。自分の手で天使の様に美しい男を汚すのは最高の気分だ。

「あっ、あっ、ああああああっ」

「そらそら、きちんと受け止めたまえ、俺はなかなか果てないからな、くっくっく」

「嫌だ……やめ、やめ……、あああっ……あ」

「気持ちいいんだろ雅明、お前のものがまた固くなった」

「違……違う、違う、そんな……ぐっ」

 自分のモノを、ぎゅうっとアレクサンデルの手に握り締められ、またそれはいっそう固く熱くなる。

 肉がぶつかる音が、ベッドがギシギシと軋む音がさっきから部屋に鳴り響いている。

 二人の吐息はいつしか獣めき、異様な空間が広がっていた。男女の情交とはまた違った異質なもの……。

「安心したらいい。君の相棒にはなんの危害も加えていない。本当だ」

「う……あ、あぐ、ぐ……」

 アヌスに差し込まれた肉棒がグラインドされ、また違う快感が下半身から駆け巡る。アレクサンデルが何を話しているのかもう雅明にはほとんど聞き取れていない。

「くっ、……君のここは締まるね……女にも勝る……」

 肉棒がさらに膨張し、雅明は声をあげて悶える。二人ともいつしか汗が滴っている。雅明の銀の少し長い髪は額や首、頬に張り付いている。

 アレクサンデルが息をつめ、雅明の中に白いものが吐き出された。それでも雅明のものはまだ硬度を保っているため、アレクサンデルはニヤニヤ笑いながら、ぬるぬると雅明の中をゆるく挿し抜きしつつ、はち切れんばかりになっている肉棒の先に爪をゆっくりと沈み込ませる。

「ぐうう……」

 その刺激に雅明は屈した。アレクサンデルの手の中で肉棒はびくびくと震え、勢い良く白いものがシーツの上へ滴っていく。立てひざをついて四つん這いになっていた雅明は、ゆっくりとベッドに沈み込んでいった。

 ゆっくりと肉棒を抜き、アレクサンデルは雅明の背中に残りのものを吐き出していく。美しいものを汚すことがアレクサンデルの楽しみの一つだった。

 ぐったりとしている雅明を抱き起こし、その顎を捉えて唇をゆっくりと合わせ、口付けをアレクサンデルは楽しみながら深くしていった。もう雅明は何の抵抗もせずにアレクサンデルを受け入れている。ゆっくりと雅明の舌がアレクサンデルの舌に絡みつき、つつき、撫でていく。そしてぐったりとした両腕をアレクサンデルの首に回し、抱きついてきた。

(ふ……。可愛いものだな)

 アレクサンデルはそのまま再び雅明をベッドに押し倒し、再び愛撫を再開する。

 夜はまだ長く続きそうだった……。

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