びけいこわい 第8話

 腰ふらふらでがくがくなのを我慢して、俺は千川と一緒に家まで帰ってきた。
 俺が着替えて部屋のベッドで寝っ転がっている間に、千川は夕食を作ってくれた。
 呼ばれて下に降りると、ごちそうがキッチンのテーブルに並んでいた。
「はい! 薫の大好きなビーフシチューにシーザーサラダにさくらんぼ入りワインゼリーだよ」
 黒のエプロンを外しながら、奴が自慢げに言う。
 ちょっとかわいいなこいつ、やっぱり。子供っぽく見えるからかな。
 椅子を引いて座らろうとしたら、腰が一瞬ぎくっとした。
「う」
「どうしたの?」
「なんでもない」
 なんとか座る俺。
「……いただきま……ーす」
 とぎれとぎれ声の俺。というかかすれがちの声の俺。
 さんざん喘がされたあとだから、声を出すのも辛い。
 腰もがっくがくだから椅子に座るのも辛い。
 だがしかし! ここでふらっとしたら、奴に抱きかかえられて飯を食うはめになるから、俺は断じてふらっとするわけにはいかないのだ!


 う、うまい。
 千川は飯作りが上手いんだな。
 目玉焼きですら失敗する俺と違って、あらゆる料理ができそう。
 びけいって料理まで上手なのか。
 平凡すぎる俺にはわからん。
 ビーフシチューもサラダもレストラン並にうまいな……。

 ずずずと啜ってたら、強烈な視線を向こう側から感じ、見ないように努力した。
 見なくてもわかるっつの、奴が食い入るようにして見てんのが。
 ちょっとでも反応したら、とんでもねえことを言い始めるに違いない。
 だから俺は料理を腹に詰め込むことのみ集中する。
 それこそが安寧への道への第一歩!

 とはさせてくれねえのがこの変態だ……。
「ふう、そのお口で僕の息子も食べてほしいんだけどな」
 ぶふぉおっ!!!!
 何を言いやがるんだいきなり。
 驚いてのけぞりかけた拍子に、腰に激痛が走りふらついてしまった俺。
 いでええええええええええっっっっっっっっっっ!!!!
 そのまんま椅子から転げ落ちた。
 そりゃもうコントみたいに。

 痛えよう……。
 くそ、なんだってこんな目に……。
 涙ぐんでいたら、椅子が後ろに引かれる音がして、スリッパがぺたんぺたんと俺に向かってくる音がする。
 ……はっ!!!!
 やっちまったああああぁぁああぁあっっっっっ……!!!!!

 見上げると、赤く上気した顔の色気ダダ漏れの変態が!
「あ、せんか」
「だめじゃないか薫。痛いのなら話してくれないと」
 腰砕けの低音ヴォイス。女なら一瞬で昇天しそう。
「い、痛くなんか」
 必死に立とうとしたけど、さっきまで抱き潰されていた俺にもう立ち上がる力はない。
 誰か助けてくれ、この変態から!
「恥ずかしがりやさんなんだからなあ、もう」
 語尾にハートマークがついていそうなほど、甘ったるい砂糖漬けの声で千川はつぶやき、さも嬉しそうに俺をお姫様抱っこした。

 ぎぃやぁあああ。なんか固いものがお尻に当たってるんだけど!
 こんなところでやられたら嫌すぎる。
 いつも飯食ってるところだぞ?
 おふくろやおやじが話しして、くっだらねーダジャレを連発してるんだぞ。
 そんなところで襲われたくない!

 千川は完食されたビーフシチューの皿を押して、まだ手がつけられていないゼリーのガラス容器を引き寄せ、ピンク色のそれをデザートのスプーンで掬った。
「薫……、あ〜んして?」
 やっぱりそれか!
「そんなの、いいよ。自分で食べられる。あと、椅子におろしてくんないかな? ……ひゃうっ」
 いきなり千川が俺の耳をべろんと舐めやがった。
 変な声出るからやめろ!
「遠慮なんかいらないよ。ね?」
 にっこり微笑むびけいがこわい。
 逆らったら恐ろしいことされそうだ。
 仕方ない……。
 差し出されたスプーンのゼリーを吸い取った。何故かそれを超間近で見ている変態は、ごくりと生唾を飲み込みやがった。何を想像しているのか、恐ろしくて聞けやしない……。
 ろくでもないことに決まってるからな。
「はあ……かわいいな薫。小さなお口でちゅるるんって食べて、舌もかわいい」
 心の声がだだ漏れてるぞ変態ぃーっ!!!
 激しい息遣いがこわい。
 息かけんなこっちに、頼むからさ。
 どんどん大きくなる尻の固いもの。
 さっきあんなに出したくせにまだ出せるのか? こいつの精力どんだけあるんだよ。毎日長芋一本食ってすっぽん鍋でも啜ってんのかよ?
 こわい、こわすぎるこいつ。

 震えてしまったせいで、ゼリーがシャツの胸元に落ちてしまった。
 げ、シミになるじゃん。
 取ろうとしたら、奴が手首を掴んで止めた。
 何するんだよ!
「僕がとってあげるね。僕のミスだし」
 ミス?

 千川の綺麗な顔が俺の胸元に降りた。かと思うと、奴は自分の口でゼリーを吸い取った。何やってんだこいつ……。
「あっ……ふぅ!」
 シャツごと乳首を食まれた。
 じいいいいい〜んと、甘いしびれが広がって、思わず変態に抱きついてしまう。
 奴はそのまんま、シャツの上からじゅうじゅうと吸いまくる。ゼリーのシミどころか、奴の唾液でたちまち濡れそぼっていき、シャツ越しの奴の舌と唇の感触がたまらない。
「やだ……つ、て! は、あ、ああぁ!」
 立ち上がった乳首を、奴が歯でやわらかく噛む。そして再びしつこくじゅうじゅうと吸う。
「やめろよ! 俺、あうっ」
 俺の下半身まで反応しだして、また身体が熱くなってくる。だめだってこれ以上やったら壊れるって。
 やっと開放されたときには、俺は脱力しきって、千川の腕に抱きかかえられていなければ座っていられない状態になっていた。
「ゼリー……、途中だったよね。食べなきゃもったいないよね」
 情欲に目をうるませた奴が、俺の口元に再びゼリーを運んでくる。俺はかすみがかった視界でそれを見て口を開いたのに、奴はわざとぼとりと喉のあたりに落としやがった。
「あ〜あ……。だめじゃない……」
 嬉しそうに言って、奴は俺の首筋に顔を埋めて、ゼリーごと俺の首筋に下を踊らせる。そこはもう、奴のつけたキスマークだらけの場所なのに、新しいそれがまたちゅっちゅとされて増えていく。
「だって、お前が……」
「ふ、そうだよね、僕が悪いんだよね。ちゃんと食べさせてあげるね……」
 今度は奴は自分がゼリーを食べ、それを口移しにしてきた。甘いゼリーと一緒に奴の舌が入ってきて、絡み合う。
 れろれろ……ぴちゃ、じゅうううっ。
 もうだめ、おかしくなる。
 おかしくなりたくないってのに……。
「ゼリーほ……し。水」
 やっと唇が離れたのに、そんなことをねだってしまう俺。変態は嬉しそうに微笑み、喜んでと言った。
 今度は水を口移しで何度ももらう。
 キスどころか、ギンギンに立ち上がった俺の息子を、トレパンから引きずり出して、先走りをぬるぬると全体に塗りつけるように扱く。
「んっ、んっ……。気持ち…い」
「もっと気持ちよくなって」
「せんかわ……ぁ」
「かわいい。顔真っ赤で……ふふ、ああ、何もかも食べちゃいたい。夢みたいだよこんなところで薫を抱けるなんて」
「だめ、俺、ベッドのほうが……」
「ふふ、それこそダーメ。僕の膝の上で言ってよ。それとも止めてほしい?」
 ああまた意地悪な寸止め作戦か。
 好きだなこいつも。
 後ろが疼いて仕方ないよ。擦ってくれよ、お前のやつで。
 またキス。
 俺は熱を鎮めてほしくて、夢中で奴の舌を吸って、腰を擦り付けるように奴に抱きつく。
 喉の奥で奴は嬉しそうに笑った。
 そしてなぜか、一切の愛撫を止めて俺を床の上におろした。

「え? なんで……?」
 体中疼いて仕方ないのにここで終わりかよ?
 奴はにっこりして、
「欲しいのなら約束して?」
「なに……を?」
「俺が欲しいって言ったら、ちゃあんと言う事聞くこと。朝でも昼でも学校でも」
「学校はやだ。勉強できない……」
 俺はお前と違うんだから。すると奴は考え込み、うんそうだねえと頭を傾ける。
「それは薫にも都合があるもんね。わかった、勉学に支障がないようにするよ。それは考える」
 言いながら、奴はゆっくりと俺の後ろの穴に指を差し込み、あの場所に届くか届かないかのところを軽く優しく擦った。
 違うそこじゃない。もっと奥の方。
「でも響より僕優先ね。奴をボディーガードとか駄目だからね」
「だってあいつ友達……ッ!」
「僕といやらしいことするのと、奴とゲームするのどっちがいい? あいつはあいつで彼女といやらしいことしてるのに?」
 それ関係ないから! それよりもっと奥を……ああ、乳首を直接触ってくれよ! シャツの上からなんてもどかしい。
「我慢してる薫もいいね……。どこまで我慢できるかなあ?」
 服の上から嫌に優しく撫でていく手。違うって、もっと強くしてって。
 なんでそう意地悪なんだよお前は!
「友達は、友達だ……から」
「ふうん……そこまで思い込まれてあいつも幸せだなあ。妬けちゃうかも」
「俺、ぼっちはや……」
「そっかあ、薫っておとなしいもんね。あいつと違って。仕方ないなあ、ま、遊ぶくらいは認めてあげようか」
「うう……」
 涙ボロボロの俺。どうやら奴は俺の涙に弱いらしいって、俺は女かよ!
「ああ泣かないで僕の薫。意地悪言ってごめんね」
「しらねえ……お前なんて」
「ごめんね、あんまり薫が可愛いものだから。そうだよね、一緒にずっと暮らすんだもの、外では自由でいいよ」
 奴は自分の前をくつろげて、ゆっくりと俺の中にじわじわと入ってくる。
「はああぁあ……」
 やっと与えられた刺激がたまらなくて、俺は奴の腰に両足を絡ませた。
 気づいた千川は、またくすくす笑う。
「本当にもう薫ってば。僕をこんなに夢中にさせてどうするのさ?」
「あ、動いて」
 腰を力なく動かしてねだる俺。
 それはいきなりずううんっと来た。
「ひぐっ……」
 あの感じるところを強くこすられて、それだけで俺はまた白濁を吐き出してしまった。びっちゃりと濡れたそれが生暖かくて、淫靡な臭いがして、それが俺をたまらなくさせる。
 今度は俺の方から奴に口づける。
 するとそれを合図に、千川は俺のシャツをまくり上げて、きつい愛撫と一緒に腰を揺さぶり始めた。
「ううっ……は、んっ…ん……つっ、せんか……あ!」
「ごめん僕もう余裕ない。薫のせいだよ」
 めちゃくちゃに腰を突き上げてくる千川に、喜んで口付けて首に抱きつく俺。背中が床に擦れていたいのに、それすら刺激になってもっともっと欲しくなる。
 揺れて見える天井に、ぎらぎらと情欲を滾らせて俺を見下ろす千川。
 お前、そんなに俺が好きなのかよ……。
 手の指先から足の指先まで、奴の与えてくるしびれが広がって、奴に支配されているみたいだ。
 起き上がらされて、奴の膝の上に座る格好になると、俺は奴に離されまいと必死にしがみついて腰を揺すった。違うところに当たって一瞬意識が飛びかけた。嫌だ、まだ早い。もっとこの気持ちいい気分に浸っていたいんだ。
「こんなこと…して、くれるの、僕だけだよ?」
 千川が長いキスのあとに言う。
「ん、千川だけ……」
「僕のこと好き?」
「ん、好き、ぃ」
 好きだと言ったのに、奴はなぜかため息をついた。
「抱いてる……ときだけしか……正直じゃないんだから、なあ薫は……。そこがいいのかな?」
 耳を齧られて悲鳴を上げる俺。
 またイってしまう。
「駄……目、でしょう薫? さっきからイっ……てばっかり。朝、までもたない……よ?」
「朝まで……するぅ」
 ぐしょぐしょの結合部から、じゅぶじゅぶといやらしい水音がする。熱くて固くて気持ちいいい。
「欲張り……さんだ、なあ薫は」
 まんざらでもない奴の声。
 ぎゅっと抱きしめられて、また強く突き上げられる。千川も本当に余裕がなくなってきたらしく、コントロールがぶっ壊れたみたいに俺をめちゃくちゃに触りまくり、揺さぶりまくった。
 激し……、でもいいっ!
「……は、かお……る」
 床に押し倒され、奴が俺に抱きつきながら倒れ込んで来た。
 同時に俺の中を蹂躙しまくってた奴がビクビクと震え、どくどくと白濁を吐き出してなだれ込んでくる。
 それを一滴も零すまいと飲み干していく俺。
 皆俺のなんだから……。

 ああ気持ちよすぎる。
 俺どうなるんだろ本当に。

Posted by 斉藤 杏奈