悪魔なご主人様 その2

 異世界トリップと言うのものは、本当に心臓に悪いものだと思う。

 だって、アパートの部屋をあけるなり、森の中ってのはどうなんだ? 一晩中森の中をさまよい続け、狼に追いかけられるわ(持っていた瓶ビールが狼の鼻に運よく当たって撃退)、この世界の男に泥棒呼ばわりされて追いかけられるわ(運よく男の大事な所を蹴り上げて撃退)、甘い実を食べて、おなかを壊したりして散々な目にあった。

 着ていたジーパンもジャンパーもぼろぼろのどろどろ。へたっているところを、今のご主人様に助けられた。なんでもお城に行く最中だったとのことで、立派な馬にまたがって、紺に金モールの軍服をまとったご主人様は王子様に見えた。

 ぼろぼろのところを王子様みたいな人に助けられたら、普通、ご主人様をいい人だと思うよね?

 ところが蜂蜜色のブロンドの髪にダークブラウンの瞳をお持ちのご主人様、とっても根性が悪い奴だった。

「おかえりなさいませ」

 私は城からおかえりになったご主人様を玄関で出迎えた。ご主人様は帰ったと言い、私に軍服のマントを手渡した。私はそれを争うかのように待ち受けているメイド達に手渡す。案の定背後で衣擦れの音がわきあがっている。

「ご主人様のものなんだから、大切にしてくださいよ」

 私が振り向いて注意すると、頭から二本の銀の角が生えているイライザがぶーたれた。

「いくらアキラ様のおいいつけでも、これは女の争いなんです!」
「そーです! 男性の貴方には関係ありません」

 ミリーも同じ様に言い、親指大の銀の角をぎらつかせた。この二人、そのうち頭突き合戦を始めるんではなかろうか。

 この屋敷の者はみんな悪魔で小さな銀の角が生えている。生えていないのは私だけだ。普通こんな悪魔だらけのところにトリップしたら、人間は食われそうなもんだけど、私はなんでも魔力がとても強いらしく誰も襲っては来ない。自分では魔力なんてあるとは思えないけど、皆が言うからあるんだろう。人間は珍しいものではなく、町に出れば結構いる。ただ、私みたいにトリップしちゃった人はいないらしい。

 二人の喧嘩はやみそうにもない。どうやって止めるか考えていると、奥のほうからもう一人のメイドが出てきてご主人様がお呼びですよと言われ、私はマントに気をとられながらも頷く。

 ご主人様の部屋へ続く廊下をメイドと並んで歩いた。

「まったく、あの娘たちったらはしたないわ」

 アンナはあきれたように私に言った。私は、はは……と笑うしかない。このアンナはちょっと苦手。なぜなら私に気があるから事あるごとに密着してくるので困る。今も私の腕に自分の両腕を絡め、豊満な胸を押し付けてくる。

「ねーえアキラ様、執事なんか辞めちゃって、私と人間界へ行って結婚しましょうよ」
「ええ? そりゃあ無理ですよ。私の真名、ご主人様に奪われてるんですから」

 真名を奪われてさえいなければ、私はとっくにこんな悪魔屋敷出てってる。だけど、ご主人様の魔力は私より相当上らしく、逆らおうものなら何をされるか分からない。機嫌を損ねて魔物のえさにされたらたまったもんじゃない。

「私が食べちゃいたーい。アキラ様ってば、本当に素敵ですもの。この黒い髪といい、綺麗な瞳といい、おいしそうな唇も食べちゃいたい」
「はっはっは。もう止めましょう。ご主人様の部屋の前ですよ?」
「あら」

 残念とばかりに、アンナは私にまとわりつくのを止めてくれたのでほっとする。 
 

 部屋にノックして入ると、アンナが手渡してくれた酒瓶とグラスが載ったトレイをテーブルの上に置いた。ご主人様はもうすっかり普段着に着替えていて、くつろいでいる。

 なだらかな曲線を描くソファにだらしなく身体を預けていても、美形は様になるなと私は妙に冷めた目でご主人様を見ていた。ご主人様はそんな私を見て、にやりと笑い手招きをする。なんだろうと近寄ると、青い人の頭ほどの大きさの瓶を差し出された。嫌な予感がする。

「アキラにおみやげ」
「いりません! お心だけいただいておきます」

 ご主人様のおみやげはろくな物がないのだ。異様に光り輝く鳥を見せられて三日間目が見えなくなったり、声が出なくなってしまうガスを出す花を見せられたり、飲めば飲むほど重くなっていく変な酒ボトル(泥酔させられた)とか、人体に被害を及ぼすものばかりだ。今回もろくでもないものに決まっている。

「そうか? でも……」
「失礼します」

 ドアへ向かおうとしたその時、いきなりふわりと身体が浮き上がり、私の意志に関係なく身体がご主人様のベッドに滑るように移動していく。

「なっ」

 手足は動けど、胴体が押さえつけられたように動かなくなってしまった。青い瓶を持ったご主人様が意味深に笑いながらベッドの端に腰掛けた。

「ご主人様! 何するんですか、私は男ですよ」
「うそつけ。女だろ」
「ご冗談を。女が執事なんかしますか。女だったらメイドを希望しましたよ」

 私は背中に嫌な汗がにじみ出てくるのを感じていた。非常にやばい。

「アキラ。お前は変に魔力があるからな……、俺に女とばれると危険だと知っていたから男の振りしたんだろ?」
「いやいやいや、男ですから」

 すごい勢いで私は身の潔白を証明したが、ご主人様は全く聞いていない。ダークブラウンの瞳をきらりと光らせると、青い瓶のふたを開けた。

「な……んですか、それ」

 恐怖で私は声がのどでかすれてしまった。瓶の中から出てきたのは青緑色のたくさん足が付いている気持ち悪い生物。例えるなら緑色のたくさん足が付いているタコ……。てらてら光って最高に気持ち悪い。私はナメクジ系が大嫌いなので、とうぜんこれも駄目。

 だけどご主人様は平気そうにそれを両手で持つと、私の鼻先まで近づけてくれた。グロテスクな姿の割には、妙に芳しい花の香りがする……。

「これはな、デュイスという魔界の生き物。うそつきなアキラをこらしめる事ができるんだよ」
「うそじゃないです。本当ですから!」
「もういいよ。そのうち言いたくなるからな」

 楽しそうに微笑むご主人様にもやっぱり銀の角が二本生えている。ただ、その角、魔力が大きい分だけ長い。大人の男の手のひらほどある。
 上下、黒の絹の服をさらりと着ているご主人様が心底悪魔に思えた。

「私、仕事が……」
「主人の命令以上の仕事なんてないぞ。さあデュイス、このうそつきをこらしめてやってくれ」

 ご主人様は無情にもその薄気味悪い生き物を、私の執事服の上にぼとりと落とした。私は甲高い悲鳴をあげる。でも絶対に身体はベッドから動かせない。 

「やめてください! どかしてっ」
「だめだ。それより見てみろ、面白いことが起こるから」

 化け物はぬめぬめとその何十本もありそうな触手を蠢かせていたが、縮んだかに思えた瞬間、透明な粘ついた液体を出し始め、私は気持ちが悪くて目を閉じた。さっき香った花の香りがきつくなる。

 すぐに私は違和感に気づいた。なんだか化け物の載っている胸の上がぬるぬるするような……。閉じていた目を開いて仰天する。化け物が大きくなっているのだ。そしてもっと驚いたことに、服が化け物の出した粘液で溶けていっている……。

「んー。なんかおかしいなあ。おっぱいって男でもこんなに大きなもの?」

 ご主人様がいたずらっぽく笑いながら、むき出しになった私の胸の先をはじいた。

「うそっ! なんで溶けるんだ」

 私はびっくりする。

 むき出しになった乳房を、触手がこすりあげて締め上げてきた。微妙な感覚で私は声をあげる。

「いや!」
「ふふふ、やっと女らしい声をあげたなあアキラ」

 ご主人様は楽しそうにしている。私は粘ついた化け物の胴体を手を伸ばしてどけようとして、反対にその触手に両手を拘束された。いつの間にか化け物の身体は大きくなり、私の身体の半分くらいに成長している。触手の太さも女性の手首ほどある。タコのような吸盤のついたそれが、ぬるぬると粘液を発しながら私の手首を締め上げる。

「ひゃ……」

 口のように開いた触手の先が、両乳首に吸い付き、私は声をあげる。別の触手は飽きもせずにぬるぬると胸を卑猥な形にもみあげている。

「ご、ご主人様……やめてください……。いやなんです……ああ」
「女だと認めるか?」

 私は化け物にこれ以上されるのが怖くて、真剣に縦に首を振る。

「はい、認めます、だから……」
「そうか、それならしばらくデュイスに遊んでもらえ。それは女と性交して成長する生き物なんだ。女の蜜が大好物でな。搾り取るために卑猥なことをする。男に物足りない悪魔の女達はわざわざデュイスを飼っているくらいだ。性質はおとなしいし人間を食べたりもしないから安全だぞ」
「え……」

 にやにやとご主人様は口元をゆがめ、私のズボンの上から太ももをなで上げた。

「罰だ。デュイスにお前の初めてを奪ってもらうんだな。お前、処女だろ」
 
 ぬちゃりと音がして、触手が私の下半身に伸びてきた。最初は冷たいだけだったそのぬめぬめとした胴体はいつの間にか人肌ほど温かくなっている。触手からあふれ出る粘液でどんどんズボンが溶けていく。

「ああっ……いやあ!」

 下着が溶け、触手が恥ずかしいところをぬるっとなで上げた。甘いしびれが走り私はもがいたけどどうにもならない。
 触手が私の両足をM字型に広げて固定していく。

「いやあ!」

 ご主人様がじっとその部分を見ているので、はずかしい。触手が何本も伸びて私のそこをぬるぬると汚していく。また先端の口が開き、私のある部分に吸い付いたとき、むずがゆい痺れが電流のように走った。

「あああんっ! なにっこれえ」

 ちゅうちゅうと吸われてそこが異様に熱くなり、自分から何か流れ出ている気がする。うずく快感に足がしびれ、恥ずかしいところが緩み、思わず小水をもらしそうになる。

「ふふ、そこはクリトリスといってな、触られるとどんな女も大抵よがる。いやらしい液体が流れ出ているぞアキラ。初めてなのに淫乱だな」
「ちが……あああ……だめ」

 違う触手が、いきなり恥ずかしいところへ一本入り込もうとする。嫌だ、こんな化け物に初めてを奪われるなんてと私は身体をばたつかせたが、触手がぎっちりと拘束しているせいで動けない。

 ごぽりと音がして、秘唇に粘液があふれ出た。化け物が出したものだ。その粘液を触手が身体中に塗り広げていく。もうどこもかしこもぬるぬるだ。初めてだというのに、太い触手は粘液のぬるぬるを利用して私の中に入り込んできた。妙にじんじんとして熱く、私のそこがうごめいているのが分かる。

「お願いします……ご主人様。いや、いや」

 弱弱しく私が懇願しても、ご主人様は私の髪を微笑みながら撫でるだけだ。化け物に犯されそうになっているのに助けてもくれない。ぼろぼろと流れ出る涙をご主人様は二又の舌を出して舐めた。

 秘唇に入り込んだ触手が上下に出入りする。その刺激はたまらないほど気持ちよくて私は甘い声をあげる。乳房をこねくりまわされ、クリトリスを吸い上げられ、身体中をぬるぬるの触手が我が物顔にはいまわる。

 私はおかしい、何故初めてなのにこんなに感じてしまうのだろう。まだ18歳なのに淫乱なのだろうか。

「デュイスの出す粘液には媚薬効果があってな……。だから気持ちいいだろうアキラ」
「はんん……あん、ああ」

 いつのまにか化け物の胴体は私の背中にあり、私はまた成長した化け物にもたれてあえぎ声を上げていた。

 触手たちの動きは激しさを増し、私は触手に拘束されながらも身体をくねらせる。クリトリスに吸い付いていた触手がはなれ、その凹凸がついた側面でクリトリスを強くこすりつけてきて私はたまらない刺激に目の前が白くなる。

「ああああっっー!」

ぼろぼろに服は溶かされてしまい、私は全裸で、ご主人様のベッドで痴態を繰り広げている。ご主人様は満足そうに息をつくと、うっとりと私を見た。

「こんなすばらしい身体を隠していたのだな。いい眺めだぞ」
「なんで……ご主人様……うう」

 あふれ出る蜜を触手の先の口が再び吸い上げている。その刺激にさらに身体が反応して熱くてぞくぞくする。ご主人様は妖艶に微笑み、私の唇を人差し指でなぞると、口腔内に差し入れてきた。

「お前、元の世界に戻ろうとしてるだろ……」

 官能の世界の中で、私はぎくりとした。それは内密に自分で探し当てた方法だった。

「俺をなめるなよ。お前のやろうとしていることなどお見通しだ」
「だって……、帰りたいんですもん」

 もう女ってばれてしまったので、私はそのまんま女の子言葉で話した。化け物の愛撫が濃厚すぎて頭の中に霞がかかっていて、どうでもいいや状態に成っている事もある。

 恥ずかしいところに熱が集中して、手足も顔も頭も唇も力がもう入らない。触手は私から蜜をできる限り吸い上げようとしているようで、執拗に私を愛撫して絶対に離そうとしない。秘唇に出入りしている触手の動きもだんだんと奥へ奥へと向かっているのがわかる。じっくりと揉み解されながらこじ開けられているようだ。

 それを見てご主人様は顔をしかめた。

 ご主人様が何か呪文を唱えると、その化け物はいきなり元通りの大きさに戻り、ご主人様の手によって青い瓶の中に戻された

「ご主人……さま?」

 そのダークブラウンの瞳は、怖い光をたたえている。。

「帰さない」
「え……?」

 ご主人様は、自分の服を床に落とした。そのまま化け物の粘液でぬるぬるになっている私の身体の上にのしかかってくる。

「何のために皆に女とばれない魔法をかけていたと思う? 何故女と知らぬふりをしていたと思う?」
「……は? って……ばれてたんですか?」
「ばればれだ。俺が魔法かけてなかったらお前など、とっくに他の男の餌食だ!」
「うそ……うんむ……ふ……」

 熱烈なキスをご主人様にされ、私は呼吸困難になった。ぬるぬるの身体をご主人様の大きな手で撫で回されながら……。

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 さらさらとやわらかな音を立てて、湯が流れていく。
 私はご主人様の膝にのせられて身体を洗われていた。漆黒の大理石のご主人様専用の湯殿で……。

 あの化け物のぬるぬるした粘液は取れたけれど、身体の脱力感は取れない。ご主人様はもう身体の呪縛の魔法は解いたと言うが、一向に動かせない。それを証拠にご主人様の手を払いのけることもできない。

「ん……」
「そのように潤んだ目で見るな。まったく」

 あの化け物に私の身体をめちゃくちゃにさせておきながら、やっぱりぬるぬるなのは気持ちが悪いと言う。困った方だ。

「は、んん……あああっ!」

 私の背中に手を回しているご主人様は、胸の先に唇を寄せると、まだやわらかいそこを吸い上げてきた。さっきの化け物にされた刺激を思い出し、私ははしたなくも乳首をまた固くしこらせてしまう。片方の乳首をご主人様は指で摘み、ぎゅっぎゅっと刺激を加えてくる。ずきんずきんとした痛みに私の下半身は何故かはうずき、声を抑えられない。

「はあん! んんんっ」

 ご主人様は私の乳房を舐めて、吸い上げて、噛んで、唾液でべとべとにしていく。

「お前、本当に胸が大きいよな。これで女だとばれないと思ってるほうが不思議だぞ」
「……あ、だって、私……、元の……世界で……男に……よく……まちがわれ……てたから……」

 そうなのだ、私は身長が170センチもあったし、可愛い風貌でもない。男だったら良かったのにとよく友達にからかわれたくらいだ。

「ふうん」

 ご主人様は再び私の胸を吸いだした。しつこいぐらい胸への愛撫が続いて、恥ずかしいところからまた蜜が溢れてきているのがわかる。

「あん……んん……は」
「こんなに感度がいい身体なのに。……まあ俺には好都合だったがな」

 ご主人様の手の動きで乳房がいやらしい形に歪み、自分の胸ではないみたいだった。やがてご主人様は、ずっと手だけでなぶっていたもう片方の乳房に吸いつく。やさしく歯で乳首を甘噛みされて、私は身体にみだらな電流が流れていく。

 ご自分の唾液でぬるぬるになった乳房を、いやらしい手つきで何度も何度も揉み上げて、ご主人様は楽しそうに、喘ぐ私を見下ろしている。

「も……だめ……です」
「アキラ、そうだな、やっぱりベッドでしないといけないな」

 いきなりご主人様の指は私の太ももを割り、秘唇の上の固く熱くなっている肉の芽を撫でた。

「ああああっ……、あーっ!!」

 その触り方は絶妙すぎて、経験がない私はその一触りであっけなくイってしまったのだった。

 ご主人様は、ぐったりとした私の身体を丁寧にタオルで拭き、元のベッドに運んで横たわらせ、ご自分も同じ様に横になった。驚いたことにあの化け物の粘液でべちゃべちゃのぼろぼろになっていたベッドが、元のように美しくなっている。

「ああ、やはり、このほうがよい」

 幸せそうな声でご主人様は言い、私を背後から抱きしめると両手を肌に滑らせた。ご主人様の唇は私の耳朶を噛み、片方の手が胸を押し上げるように何度も揉み、もう片方の手が恥ずかしいところを撫でている。

「あ。ん。……あ、あ」
「なあアキラ。お前が何故この世界に来たかわかるか?」

 そんなこと分かるわけがない。ご主人様が硬くなった胸の先端をしごいたので、私はその甘い痛みに身体を震わせた。それにくすくす笑いながらご主人様は続ける。

「ある日、気まぐれに異世界を覗いていたら、家路に急いでいるかわいい女がいたんだ。髪を肩まで伸ばして、寒さのせいか頬を赤くしている女が」
「……れは」
「そう、アキラ、お前だ。お前を目にした瞬間、俺は身体中の血が沸騰するかと思った。お前が欲しくてたまらなくなって、禁呪の魔法を使ってお前を召喚したんだ」
「な!」

 抗議しようとした声は、ご主人様の唇の中で消えてしまった。

「ん……!」

 ご主人様は私を仰向けにして、馬乗りになりながらもキスを止めない。私はキスなんてされたこともないし、したこともないので、ディープキスは本当に苦しい……。
 
 なんてことだろう。
 ご主人様が私を異世界にトリップさせた張本人だったとは!
 それなら直ぐに現れんか! ってなものだ。
 絶対にこの人の事だから、私があれこれするのを笑って見てたに決まってる。どこまで根性曲がってるんだろうか。

「も……や!」

 私は力の出ない腕でのしかかるご主人様を押しのけようとしたけど、悲しいかな、ご主人様は余計に燃え上がっちゃったらしい。ますます激しくキスされ、余計に酸素不足になっただけだった。
 
 でも私の心の声が聞こえたのか、ご主人様は力が抜けてだらりとした私を抱きしめると回復の呪文を唱えてくれた。やった、開放してくれるみたいだ。力が身体にみなぎって普段のように動かせるようになる。よし!

「では、私はこれにて失礼……」
「馬鹿者、逃すか!」

 やっぱり駄目だった……。

 ご主人様は、起き上がろうとした私をベッドに深く沈めるとにやりと笑う。私はよみがえった力で、そのご主人様の瑞々しい身体を押しのける。……押しのけられずにへばった。

 首筋を熱い唇に吸いつかれては舌で舐められる。自由に腕はうごくけれど、ご主人様の絡み付いてくる身体からは逃れられない。

「どうして……」
「何故って、やっぱり元気なアキラを食べたほうが美味しいから」

 この方、サドだ。抵抗する私を楽しんでいる。

 それにしても、さっきから何かが太ももに当たる。それが気になって仕方がない。なんだろう……熱くて太い棒のような……、まさかあのデュイスという化け物が瓶から出てきたのでは。私はぞっとして、それを払いのけようと思って掴んだ。途端ご主人様の身体がびくっと反応する。

「なかなかどうして、大胆だなアキラ……」

 ご主人様の目が妖しく光る。私は持ったものに視線を当てるとびっくり仰天した。
 ぎゃああああああっ! これはご主人様の……ご主人様のアレじゃーっ!!!!

 あわあわして、でもそれを手放すことすらできない私に、ご主人様はまた良からぬ事を考えたらしかった。
 
「大好きなご主人様のものを、舐めてもらおうか」
「えええええ?」

 いきなりそんなプレイは勘弁いただきたい。でもご主人様はそのまま自分の腰を私の顔まで移動した。はじめて見る男のアレが凶暴な威力で迫ってきてかなり怖い。やっぱり金髪の人はあそこの毛まで金髪なんだなとか、いらないことを考えて現実逃避したい。

「いや……、駄目ですご主人様!」
「これを舐めたら、勘弁してあげてもいいよ?」
「うそ! ご主人様がそんな優しいわけない!」

 涙ぐんで首を振ると、何故だかわからないけどもご主人様の猛烈なキスが顔中に降ってきた。一体なんなんだ……。とりあえずいきなりアレを舐めることは免れたようで、ほっとする。
 ……ほっとするけど、ご主人様のいやらしい行為は続くらしい……。

 やばい、本当に本当にやばい。

 街で買い物をしている時に、人間が言っていた。悪魔と交わると、もうその悪魔と一生離れられなくなると。私はそれを聞いて恐ろしくなった。そんなことになったら一生もとの世界に戻れなくなる。私は帰りたい、お父さんやお母さんと一緒にいたいのだ。そして普通の男と結婚するのだ。

 ご主人様の手が、太ももの中へ中へと撫で回していくので、私は知らずに足に力を入れて触らせまいと頑張る。でも力で敵うわけがなくて、あっけなくご主人様の指は私の局部に触れる。

「いや……」
「アキラ、俺を見ろ」
「お願いします。私、帰りたいんです。元の世界に」
「そんなに俺が嫌いか」

 さっきまで化け物が出入りしていた秘唇に、今度はご主人様の指がぬるりと入り込んだ。化け物の粘液がまだ私の内部に残っている。化け物は深くは入っていなかったようだ、ご主人様の指の先が何かにひっかかっているようで、それが痛い。それを知ってか知らずかご主人様は指を二本も入れてかき回していく。
 私の目から生理的な涙が溢れて頬に伝っていった。

「あ、……あ! ご主人様やめて」
「ふん、この身体を他の男に渡すというのか。お前が帰る方法を教えてくれるという人間はお前の身体を欲しがったはずだが」

 私は行動を監視されていたのだと知った。
 そう、確かにあの男は確かに私の身体と引き換えだと言っていた。それでも私は構わなかった、一度我慢するだけで帰れるのなら……。

 そして帰してくれる日は今日で、もう時間が迫っている。早く行かないと。

「お願い、ご主人様。帰りたいんです」
「……アキラ」

 ご主人様のダークブラウンの瞳が揺れる。だけど、返事は手首の拘束だった。 

「アキラには悪いが、行かせることはできない」

 捕われてしまう……、この美しい悪魔に。

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 ご主人様の舌が絡みついて、私の理性を奪おうとする。
 ご主人様のことは好きだ。
 とっても意地悪だけれど、なんだかんだ言って私を護ってくれている。

「んむう……んん」
「きっついなあ、アキラのここ。デュイスがあんなに慣らしてくれてたのに、まだ指一本しか入らない」
「や! 痛い……」
「痛いか? ならデュイスにまた粘液を入れてもらうか? あれの液体は媚薬効果が高いからな」

 そんなのはごめんだ。でもこの痛いのもごめんだ。歯を食いしばっているとご主人様が羽が触れるようなやさしいキスを唇にしてくれた。

「俺のはでかいからな。徐々に慣らしてやるから……」

 そういえばさっき握ってしまったご主人様のアレはかなり大きかった。

 ……大きかった……。男女のアレはアレをいれるのよね? ………………アレを私のあそこに、ホントに? うそ。
 そう思った時私は震え上がった。冗談ぽいだ! あんな大きなもの入りっこない。だって私、ご主人様の指一本でも痛いんだよ? 裂けちゃうよ絶対。

 夢中でご主人様を押しのけようと頑張った。でもご主人様はどこを吹く風で押しのけられるどころか指を三本に増やしてくれた。痛いよ。

「や……なの! お願い」
「入れて欲しいから指では嫌なのか?」
「違う! もう終わってください」
「俺が子種も出さずに終わるのか? 冗談ではないぞ」

 こ、子種ーっ!? うそっ、私……結婚もしてないのに! 渾身の力で魔法できつく結ばれている両手首を自由にしようとしたけど、本当に本当にどうにもならない。
 流れ出る涙をご主人様はいとおしそうに舐める。そして私の恥ずかしいところを嬲っている指が引き抜かれた。

 終わってくれるのかな? と思ったのはとんでもない間違いだった。

 ふっとご主人様の身体が離れたかと思うと、恥ずかしいところにご主人様は顔を埋めたのだ。そして足の付け根を舐めだした。生温かい濡れた感触であそこがズクンとうごめいたのが分かった。

 ぴちゃぴちゃ……。ご主人様が私を舐める水音。片手が私の乳房を飽きもせずに揉みしだいている。もう片手は私の秘唇をまた撫で回し始めた。やわらかい刺激で熱い蜜がとろとろ自分から流れ出ているのが分かる。

 うそだ、こんなの私じゃないと思う。でも現実だ、自分の声とは思えないほどいやらしい声を張り上げているのだから。
 こんないやらしい声出したことない……。

「ああっ……あん、はああっ」

 恥ずかしいところが熱くうずいてたまらない。嫌だって心では思ってるのにどうなってるんだろうか。ご主人様の舌がぬるりぬるりと私の肉の芽を舐めると、びりびりと電流が走る。また小水をもらしそうなあのしびれが襲ってきた。

 やだ。
 やめて、それ以上舐めないでっ。

「ううう! いや、駄目、ご主人様あっ」
「もっとやってだろ? いやらしい匂いがするし、ひくひく動いているぞ」
「やっ」

 ご主人様は唇を私の秘唇につけると、そこを思い切り吸い上げる。同時に蜜がまとわりついてぬるぬるになっている肉の芽を親指で押しつぶした。たまらない熱さ、焼け付くような痺れで私は目の前が真っ白になった。
 

 意識のどこかで、ガラスが割れるような音がした……。

 じゅるるる……。すするような音で、私の意識は浮上した。目を見開いてぎょっとする、あの触手が再び私の胸を触手で揉んでいるからだ。背中にぬるぬるの身体を感じる。さっきのように化け物に背中を預けている形だ。

 ご主人様は飽きもせずに私のあそこを舐めては吸って、指先で撫で回している。

 ぱくりと開いた触手の先が、また尖った乳首に吸い付く。
 感覚が鋭敏になっている私はそれだけでイキそうになった。どうもその触手の口の中にはぬるぬるの小さな舌があり、執拗に乳首を舐め上げてくるのだ。別の触手たちは首筋を舐めたり撫でたり、またやりたい放題している。

 ……いやなのに、気持ちよすぎてどうにかなりそう……。
 
 触手がまた私の両足を大きく開かせた。ご主人様と連携しているらしい。恥ずかしいけれどそれを上回る快感がたまらない。

「ご、主人……さま」
「いやらしい顔をしているぞ。ふふ。その顔を見たら誰も男とだとは思うまいな」
「は……ん」
「デュイスがお前の放つ淫気で瓶をぶち割ってな。いやはやアキラが相当気に入ったらしいな……この分だと……」

 ご主人様の指が動くたびに、熱い電流が走る。

 この分だと……なんだろう。考えようとしても無理だった。

 執拗に同じ場所をこするんだけどそこは一体なんなの! 段違いに甘い痺れが広がっていく。そのご主人様に負けまいとするように、化け物が触手で太ももを粘液をたらしながら撫で回し、胸への触手の愛撫が激しくなる。

 一回果てたばかりなのに、また高みに昇らされていく。何も考えられなくなり、思うのはこのたまらない快感。

「だめ! だめ……あっあっあああ」

 手が震え、私は足を突っ張らせた。身体の芯がかっと熱くなり、きゅっとしぼられる感覚が起きる……。

 また私はぬるぬるのびしょびしょになっていた。

 朦朧とした意識の中で、ご主人様がご自分のアレで私の濡れびしょの部分をこすり始めた。ぬるりぬるりと複雑にこすられるとたまらない快感が生まれて、経験がないにもかかわらずはしたない声をあげて悶えてしまう。

「はっ……んんん……あん」
「可愛い、可愛い」

 ご主人様は満面の笑みを浮かべて私の顔にキスの雨を降らせる。また負けまいと化け物の触手もキスをしてきた。なんかこの化け物人間くさくない……?

「く……」

 ついにご主人様のアレがついに私の中に割り入ってきて、私は息をつめた。化け物とご主人様は大丈夫だと言わんばかりにキスの雨を降らせ続ける。

 狭い私の中を、熱い塊がじわりじわりと入るのが分かる。でも不思議と痛くない、触手がそのいぼいぼの先から粘液を大量に出して、その部分に擦り付けていることに気づいた。

 そう言えば媚薬作用があるってご主人様が言っていたっけ……。

「アキラ、お前は俺の妻になるんだよ……」

 ご主人様に耳元で低くささやかれ、私はハッとした。
 悪魔と交わったら、離れられなくなってしまう。
 でも、もう何もかもが遅い。化け物は背後から私をしっかりと掴んでいるし、ご主人様は私の背中に両腕を回している。動けっこない。

 もう、帰れない———。

 やだ、と叫ぼうとした唇をご主人様が塞いだ。

 ご主人様のアレが、何かの衝撃を突き破って完全に収まり、私の腰とご主人様の腰はぴたりと合わさった。

「……くっ。お前のここは……男殺し……だな」
「はあう……う。や……」

 どうしよう。どうなるんだろう。
 ご主人様は私の心を知っているのかどうかわからないけど、ゆっくりと腰を動かし始めた。やたらと熱いそこは、水音を響かせてご主人様の熱く火照ったアレを迎え入れている。

 化け物が私の肉の芽を触手の先で吸い上げてきて、花洞がきゅうっとしびれる。甘い痺れが下半身を覆い、力を奪っていった。

「あ、やめて……だめえ」
「止めない、アキラ……アキラ」

 荒い息をついて、ご主人様は私を揺さぶってくる。瞼にキスされて閉じていた目を見開くと、せっぱつまったご主人様の顔が間近だった。いつも余裕しゃくしゃくとした、小憎らしいほどのあの笑みはない。

 私の視線に気づくと、ご主人様は余裕がないながらも甘く微笑む。
 じゅん……と、その笑顔を見て私のあそこがとろけるのが分かった。

「フレイ……と」

 それはご主人様の名前だ。ご主人様の腰の動きがだんだんと速くなっていく。
  
「はあん、ああっ、フレイっ」
「アキラ……」

 何かが来る。さっきまでの比ではない何かが。こわい、私どうなるの……。

「恐れるな、何も……俺がいる」
「だって……」

 は……と、また荒い息をつくと、ご主人様は私の耳にご自分の口をつける。

「お前を……南晶(みなみ あきら)を愛してる……」
「…………っ」

 ご主人様は私を思い切り抱きしめてきた。化け物も触手で同時に。
 私の中でご主人様がはじけ、アレがこきざみに震えて温かいものを吐き出している。

「晶……」

 とてもとても優しい声でご主人様が私の名前を囁いたのを、私は確かに聞いた……。

—————————————————

 ご主人様は、何度も私を抱き、化け物の手伝いもあってか何度も絶頂に私は達した。

「アキラは初めてなのに何度もイッていやらしいな」

 ご主人様は意地悪な口ぶりで、また何回目かの挿入に挑んできた、化け物が負けまいとしてまたいやらしい愛撫を仕掛けて来て私ははしたないと思いながらも、声をあげてしまう。

 何度も突き上げられ、粘膜が擦れる淫らな動きに私はまたご主人様の肉棒を締め付けてしまった。

「くっ……」
「あぁん! あっ」

 二人同時に果てたその時だった。化け物の感触が固く変化したのは。私の上に乗っているご主人様は、驚いた様に口笛を吹いた。

「アキラの魔力の威力は凄いな。デュイスが変化したぞ」
「……は?」

 朦朧として官能の世界に漂っていた私は、それが吹き飛ぶ程びっくりした。

 なんじゃあああああっ! こりゃあっ。何これ、何こいつ。

 私の後ろからいやらしい愛撫を重ねていた化け物は消え、代わりにいたのは髪の色が緑色のご主人様! すっごい美形男! そいつは溢れんばかりの人なつっこい微笑みを浮かべ、唐突にこんな事を言った。

「アキラ様……。愛しております」
「は?」

 ぎゅうぎゅうと、その男は人間の両腕で私を背後から抱きしめてきた。

「愛しております。我が君」

 男は紛れも無い人間の唇で私の耳朶を柔らかく包む、ぞくぞくと甘い快感が襲ってきた。

 ご主人様は私の中で固さを取り戻し、再び動きながら、男の顔をベッドに押し付けて私から引きはがす。

「馬鹿者! アキラは俺の妻だ!」
「存じておりますとも。ただおつかえさせて戴きたいだけです」
「ふーむ。それは面白いかもしれんな」

 私はそこで大声をあげた。

「ちょっと待って下さい! 私はご主人様の奥方などなれません、身分も違いますし、悪魔でしらないのに!」
「決定事項だ。もう魔王様の許可は戴いている」
「そんな、横暴な……」
「安心しろ、俺の妻になったなら、元の世界に帰れる」

 私はその言葉に飛び付いた。

「ホントですかっ」
「ああ、この指輪をしたらな」

ご主人様はにやりと笑うと、金色に輝く華麗な装飾が施された指輪をベッド脇の引き出しからとりだした。

「いけませんアキラ様。元の世界に帰る事はできますが、この男の寿命に付き合わされ、一生縛りつけられますよ」

 いい奴だな、デュイス。悪魔の企みを暴いてくれたよ。手を引っ込めた私にご主人様は舌打ちした。しかし直ぐに黒い余裕を取り戻す。

「ふっ。忘れているようだが、俺に真名を握られている上抱かれた時点でアキラは俺に縛られたようなものだ」
「ですが、貴方の一千年の寿命に付き合う必要はありませんからね」

 私はぎょっとした。そんな長生きしたくないよ! 性悪のご主人様にただでさえ精神を擦り減らされてるのに! 私の視線に気付くとご主人様は私ににじり寄ってきた。

「大丈夫だアキラ。お前が望まない事はしない」

 そんな甘い微笑みで言われても全く信用できませんから! 今までの悪事を忘れてないぞこっちは。いい男になったデュイスが私を庇って背後から抱きしめてくれ、その優しさに化け物時代のグロテスクさを忘れてときめいてしまった。

 しっかりしろ私! こいつはタコナメクジだ。惑わされてどうする! ああ、だけどだけど今はこいつが一番頼りになる男なんだよおおーっ!

 ご主人様はそんな私の態度が面白くなかったらしく、むっとして口をへの字に曲げる。

「元の世界に帰れたら、お前のすきなとりの唐揚げが食べたい放題だぞ」

 う! 悪魔のささやきだ。

 この魔界ではニワトリがいないせいで、この好物に私はありつけない。

「じゅわわわーっと油で揚げられ、湯気でほくほくしている唐揚げにレモン搾って食べたらうまいぞお?」

 私はとりの唐揚げの幻想を見た。あ! 山盛りに揚がっているあれは間違いなく唐揚げ~っ!

 いただきまーすっ、て、あれ?唐揚げが勝手にふわりと空中に浮いて逃げてくよー!

「いけませんアキラ様。惑わされては」

はっと気付くと私はご主人様の持っている指輪をとろうとしていた! ぎええ!危な過ぎる。

「ち! 余計な事を」

 ご主人様は私の身体を迂回して男の髪の毛を一本取り、指先から炎を出して燃やし始めた。途端、男はびくりと震えた。

「な、に……?」
「こいつは必要ない、消す」
「アキラ様……」
 
 男は私に魔法で執務服を着せると、ベッドの横の床に倒れた。

「ちょっと!」
「これは俺の髪一本で作った、いわば俺の分身だ。どうしようと俺の勝手だ」
「作り出した魔物!?」
「そうだ、天然の奴もいるがな。俺とお前の魔力によって人になったんだ。放っておくと莫大な魔力を保有するようになる……危険だ」

 そんなもん作るなぁ! 歩く災害バラマキ男め! それにさっきまで気に入っていたくせにこの冷たい態度は何?

 思わず男の手を取ると、男は苦しみながらも私を見て笑った。

「そう……です。だから心配しないで下さい」
「デュイ……ス」

 胸が苦しい。
 なんで? 私なんかたいした女じゃないよ。どうして自分が死にそうになってるのに、私の事考えてるの? そういえば、このデュイスは最初からやさしかった。愛撫はとても思いやりに満ちたものだったと思う。魔力が増しても危険ではないと私は確信できた。

 デュイスの身体からは煙が出て来た。そして手足が触手に戻ってゆく。

 このままではデュイスが消えてしまう。もう居ても立ってもいられなくなり、私はご主人様の手の平から指輪を奪う。

「アキラ!?」

 ご主人様の声がやけに遠くに聞こえる。
 後悔はない。だってこんな一途な想いを私はしらない。私は精神をデュイスに集中した。

 早くしないと! 元の形に戻ったデュイスは消え始めている。

きらきら輝く指輪を左手薬指にすっと嵌め、私は言った。

「ここに南晶はこの男と……」
私はご主人様の手をとった。ご主人様の真名を知らないからこうするしかない。フレイは通り名だ。「婚姻する。条件はデュイスを生かせる事」

 ご主人様はぎょっとした。

 悪魔の婚姻契約の際、花嫁の願いがたった一つ叶えられるのだ。ご主人様がさっき元の世界に戻れると言ったのはこの事をさす。だから私が望めば行き来が自由にできたりするのだ。

 ご主人様は、まさか私が化け物を救うために貴重な願いを使うとは思っていなかったんだろう。

 でも構いやしない。命を削っても私に服を着せてくれたデュイスに私は応えてやりたかった。

 ぱあっとデュイスの身体が光り輝き、あまりの眩しさに私は目を閉じた。そして次の瞬間には彼の胸の中にいた。

 良かった。間に合ったんだ。

 デュイスはご主人様そっくりの声で言った。

「アキラ様、私は一生貴女についていきます」
「うん……」

咳ばらいが背後から響き、私はご主人様の腕に掠われた。

怒ってるかな……と、そって背後を見上げると、そこにあったのは天使と見紛う笑顔のご主人様。
「ああ! お前はやっぱり最高だよ!」

 ドキリとする。心臓を鷲掴みにする甘い笑顔だ。

「これからも可愛がってやるからな、ふっふっふ」

 ……駄目だ、一気に悪魔になっちゃったよ、とほ。

あーあ、とりの唐揚げ食べたかったな。いけない、ちょっとこれはないよね、どれだけ食い気なんた私は。ちろっとデュイスを見上げると花のように微笑んだ。悪魔が天使を作るなんて、変なの。

「ひゃあんっ!」

いきなりご主人様に胸を触られて、私は情けない声を出してしまった。同時にデュイスが私の首筋を撫でる……。

 こ、これはまさか!

私は二人掛かりでベッドに押し倒されてしまった。右と左、それぞれの男が見下ろしてニッコリする。

「アキラ」
「アキラ様」

 着ている執事服を脱がされていきながら、私は選択を誤ったかと思った……。

「愛している」
「お慕いしております」

 ちなみにこの後、男装の奥方として私は魔界で超有名人になる……、二人の男に溺愛されながら私は幸せになるんだろうなと思った……。

Posted by 斉藤 杏奈