白の神子姫と竜の魔法 第08話

 その夜、陛下が部屋に偲んで来た。

「な、な、なんでしょうかっ」

 びびる私の前で陛下の顔がゆがみ、ジークフリードの姿になった。なにこれ!

「陛下のお姿で来れば、深夜に来ても咎められませんからね」

 しれっとジークフリードは言うけれど、じゃあ陛下はどこなんだ?

 疑問に思ってたずねると、

「私の邸へおいでです。リン王妃のおそばにいらしたいとの仰せで」

 と、ジークフリードはさも当たり前のように言い、ばさっと服を豪快に脱いだ。重そうだもんね、ジークフリードの軍服とマント。

 にしても参ったなあ。白木さんへハッパかけたけど、陛下はリン王妃のもとか。なんか無駄骨に終わった気がする。

「白木さんが可哀想じゃない?」

「馬鹿ですか。貴女はリン王妃の代わりなのに、まったく。いくらこちらが一夫多妻制と言っても、女は男を独占したがって、それこそ刃傷沙汰になったりもするのですよ」

「そうなんだ」

 ぼけっとしている私に、ジークフリードはがっくりと来たらしく、テーブルの椅子に座って、腕を組んで俯いた。つやつやの黒髪がゴージャスだ。私のネコっ毛ではあの艶は出ないな。こんちくしょう、男の癖にそんなとこまで綺麗だなんてうらやましすぎるぞ。

 でも確かに、リン王妃には悪いことをしたな。

 ただでさえ白木さんに勝てないと思い込んで、ずーんと落ち込んでたみたいだし。

 でもなあ、今の陛下はリン王妃にゾッコンだから、特に構わないかなーと思ったんだけど。

 ジークフリードが顔を上げた。

「ともかく、あんまり突飛な行動は困ります。無理やり召喚した私が悪いのですが、リン王妃は悪くないのですから」

「うん……」

 うじうじ王妃様だから、私とあんまり違いすぎると、目覚めた時に困るもんね。

「でもさあ、あの皇太后様達が連日押しかけてきたら、いくらなんでもボロが出そうよ」

「それは大丈夫。あの二人は、滅多にリン王妃の前には現れませんから。また、リン王妃もこの館をお出になることは、神殿以外はありませんでした」

「ライトノベルでよく見かける、孤児院とか病院訪問とかしなかったの?」

「明らかな宣伝活動にとられますからね。神子とはいえ、己こそが王妃と思っていた令嬢や、娘を献上しようとしていた貴族達にしてみれば、目の上のこぶなんですよ。だから目立たないようにいつもされていました。もちろん影では民にお尽くしでしたよ。光の神子の仕事は神殿で祈りを捧げ、この国の平穏を祈ることです。神子の御心を反映して、この国の秩序が保たれるのですから」

 うん? じゃあ、眠り病なんかになってたらやばいんじゃないの?

 それに私にはそんな力はないよ。やっぱりすぐにばれる気がする。

 ノートをぱらぱらめくってみたけど、やっぱり大して進んでなかった。神子は宰相から王妃の務めを聞き、不安にさいなまれた。……か。

「おやおや、能天気な貴女も不安になるのですか?」

 いつの間にか背後に回っていたジークフリードに、抱きすくめられて、かなりびびった。

 なっ。

 な……!

 なんなの!

 そういや忘れてた。今夜覚悟なさいって、言われてなかったっけ……!

 それってやっぱり……。

「ふふ。ご想像通りですよ」

 するりとジークフリードの手が、夜着の腰紐を解いて、胸をまさぐってきた。

 ぎゃあああっ!

「ちょっと、待って、待って!」

「は、なんですか?」

 ジークフリードは私を横抱きに抱えあげて、ずんずんと部屋の奥の寝台へ進んでいく。やっぱりそうなの?

 ぼすんとシーツの上に倒され、手早く服を脱いだジークフリードがのしかかってきた。この前と違うのは、もう私がジークフリードを知っている事位だ。

「私、もう、……」

 したくないと言おうとしたら、ジークフリードが唇を押し付けてきた。

 なんでこう強引なのよっ!

 ちったあ、私の話を聞けーっ!

「あれ……一回…………、だけなんじゃっ。んっ、……や、それっ」

 ジークフリードの指先は早くも局部を撫でて、浅く穿った。なんて早業……。

 反応なんてしたくもないのに、同時に首筋を吸われて、びくびくと身体を震えさせてしまう私。この間作り変えられてしまってるからな……。

「今日は仕置きですから、この前のようにはいきませんよ」

「ちょ……、なにそれっ!」

 くく……とジークフリードは笑い、きわどい部分に触れず、その周りばかりを思わせぶりに愛撫し始めた。

「……はっ…………、ん、んっ」

「さほど触れておりませんのに、もう濡れてますね?」

「違うっ」

「違いませんよ。ほら」

 ジークフリードは見せ付けるように、流れた蜜を指先に取って赤い舌で舐めた。漆黒の瞳が情欲に濡れて、私を追い詰めてくる。

 愛してなんかいないのに、身体は歓びはじめている。

 ぐいぐいと、ジークフリードは自分のものを濡れた局部におしつけてきて、私はぬるぬるとするその刺激に蕩けそうになった。

「やっ……! それ、やめてっ」

「気持ち良さそうなのに」

 震える乳房を揉みしだいて攻めながら、ジークフリードは意地悪げに笑った。みじろぎをして逃れようとしても、両手は頭上に押さえつけられていて、動けない。ジークフリードは罰だと言わんばかりに、胸の先に唇をつけて強く吸い上げた。

「あああっ…………いた……っ、あぁ……!」

 ちゅうちゅう吸われながら揉まれると、びりびりと快感がそこから生まれて、声が止められない……。これがジークフリードの魔力なのか、ただ単に女の悦ばせ方がうまいのかはわからない。局部の蜜がさらに溢れて、うごめくのを感じる。

「鈴……!」

 唐突にジークフリードが伸び上がってきて、さっきとはうってかわって激しいキスをしてきた。 

 口の中で執拗に舌を追いかけられて、触れられるのが嫌なのにすぐに絡め取られ、強く吸われるともうたまらなかった。竜の唾液には媚薬でもあるのかな……、何も考えられなくなってきて、恋人じゃないのにとか、この前はあんなに辛かったのにとか、そういう思いが白く染め上げられて消えていってしまう。

 舌が口の中から出て行き、今度は口の端を丁寧に舐められた。その動きはとてもゆっくりで、わざと焦らしているのがよくわかった。さっき、あんなに胸の先を強く吸ったのに、そして唇を求めたのに、どうしてこんなふうに意地悪なの?

 逃れようとすると弱い部分を攻められ、求めると遠のいてしまう。

 ああ、だからこれが「覚えておきなさい」……なのか。

「仕置きの意味がわかりましたか?」

 涼しい顔で言っているのかと思ったら、ジークフリードも苦しそうだった。

 固く立ち上がったものを、待ちかねたようにぬるぬるの局部にまた押し付けてくる。するとうごめいていたそこが、ジークフリードを求めて吸い付いたような水音を立てた。

「ふ……ふふ。素直でよろしいことだ」

「あぁ……」

 辛くて辛くて首を横に振ると、あやす様に耳朶を甘く噛まれた。優しい刺激でぜんぜん物足りない。

 はしたないけれど、悔しいけれど、ジークフリードが欲しい。

「私が欲しければ、自分からお入れなさい」

「でき……な、い」

「できますとも。ほら、こうやって私を掴んで……」

 押さえつけられていた両手が開放され、右手をジークフリードの慾へ導かれた。ものすごく熱くて固くてびっくりした。その衝撃がうつったのか、ジークフリードの身体がびくりと震えた。

「ほら……」

 ジークフリードが私の手を使って、ゆっくりと先端を押し付けた。たまらない熱さと刺激に、いっせいにそこは生き物のように動く。また蜜が滲み出て、ジークフリードがそれを己の慾でぬるりと塗り広げた。同時に花の芽をこすり上げ、むず痒い甘い痺れが私を襲う。

「はあぁっ……」

「気持ちいいでしょう?」

 ジークフリードが、何度もスイッチを押すように刺激した。そのたびに私はびくびくと身体を震わせて、悲鳴を上げた。熱くて気持ちよくてどうにかなってしまいそうだ。

「やっと素直になった」

 ご褒美をあげましょうと言って、ジークフリードがずるりと押し入ってきた。

 たりなかった部分に充実感が訪れ、やっときたそれがうれしくて、私はジークフリードにしがみついた。

「あ……あっ!」

 腰を動かしながら、ジークフリードは私の両胸を揉みまわした。ぬちぬちと音がするのは、蜜が溢れ続けているから。声が止まないのは気持ちよすぎるから。

 どうかしている、私。

 この前も思ったけど、どうしてこんなに幸福だと今思えるのかな。

 私って、悦楽に極端に弱いのかしら……。

「ぁあああっ!」

 不意に胸の先を指先で摘まれ、鮮烈な快感が駆け巡る。そのせいでジークフリードをきつく締めてしまったみたいで、彼は一瞬辛そうに目を閉じて唇をかみ締めた。

 その顔つきは、壮絶に綺麗で色っぽい。

 睫を震わせながら見開かれた漆黒の目に、私が映っていてどきりとした。

「こんなに締め付けて……、仕返しをしなければなりませんね」

 突然、足を肩に抱えあげられ腰の動きが早くなった。奥をなんども穿たれると、より密着した腰がジークフリードと一緒になって揺れた。

「あん……っ、あっ! あっ! ぁああっ! ……はあっ! んっ!」

「この前と……おなじ、ように、……感じ、なさいっ!」

 押さえつけられて痛いなと思っていたら、いつの間にかジークフリードの身体は黒いうろこで覆われ、手は竜の手になっていた。黒の爪が肌に食い込んで微妙に痛い。

 魔力が白濁と一緒になって注がれた。

 この前よりも熱い。

 脱力した私の中で、ジークフリードはすぐに固さを取り戻した。

 まさか。

 私がジークフリードを見ると、にやりと笑った。

「一回で終わったら、仕置きではないでしょう?」

「う……そっ! ああ!」

 腰が再び密着して起こされ、今度は座位になった。

 あえぐ私の唇をゆっくり味わって、ジークフリードは妖しい笑みを浮かべた。

「今度はゆっくりといかせてあげましょう。たまらないですよ」

 繋がった部分が、熱く蕩けていく。

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