白の神子姫と竜の魔法 第05話
「ちょ……、私、したことないっ」
「心配ない。私はある」
「あんたなんか嫌いだってば!」
「嫌いだろうが好きだろうが、身体を繋げなければ竜の契約ができない」
「なによ、それ」
「貴女は自分を守れと言ったでしょう。それを実行するには貴女の精気を取り込み、また、貴女が私の精気を取り込む必要があるのです。そうすれば、私は貴女の危機をわが事のように察知できる……とは言っても、貴女が望めばの話ですが」
説明を受けながら私は、稔にどんどん服を脱がされていった。
こんな事で初めてを経験するなんて思わなかった。信じられない。多分、これも嫌だといっても、稔……ううん、ジークフリードは私を好きでもないのに抱くのだろう。
胸の奥が、ぽっかり穴が開いたような、悲しさばかりが沸きあがった。
なんだかんだ言っていい奴だと思ってたのに……。
恥ずかしいのと怖いのと悔しいのとで、心の中がぐちゃぐちゃだ。
この男にとって私は、ただのクラスメイトどころか、ただの身代わり人形なんだ。
それ以上にもそれ以下にもならない。
ジークフリードが服を脱いだら、彼の身体は黒のうろこに覆われていて、あきらかに人間じゃなかった。それがまた怖くて、目を固く瞑る。
本当に竜なんだ。
私は人間じゃない相手に、大切にしてきたものをささげないといけないんだ。
お父さんや、お母さんがこれ知ったら、どんだけ悲しむのかな。
「そんなに悲しそうな顔をしないで。なるべく痛くなくしてあげます」
妙に優しい声になるジークフリード。
少しは悪いと思ってるんだろうか。まさかね。そんな情けがあるなんて思う甘っちょろさは、さっき殺されかけた時に吹っ飛んでったわ。
唇が、重なった。
重ねるだけでいいのに、ジークフリードはわざわざ唇を開かせて舌を忍ばせてきた。嫌だけど反抗したら何されるかわからないから、言いなりになって思うように口腔内を蹂躙させた。
ぼう……っと身体が熱くなった。
なに?
「はあ……鈴」
首筋に顔を埋め、ジークフリードはうっとりと肌を舐めて吸い上げた。同時に胸を痛いくらいにもんで、先を固く尖らせて指で捏ねた。
「や!」
「鈴」
先をちゅうっと吸い、ジークフリードが笑ったような気がした。
なんで笑うんだろう。
やりやすくするためなんだろうな。
ざりざりと固い感じがするのは、彼の身体を覆っている黒のうろこのせいだろう。顔以外の全身を覆っているのだから、地味におかしい気分だ。
爪が怖いのだけど、不思議と傷は付かなかった。
やけに慎重な動きで、ジークフリードは私の身体を暴いていった。さっさと突っ込んで終了すればいいのに、やたらとしつこく時間を掛けるから、別の感覚が生まれて声をあげそうになるのを堪えるのが大変だ。
「素直に感じなさい」
「だれが……あっ」
必死に快感を我慢する。
ジークフリードはこういった行為になれているらしい。稔の時は本当に硬派でそんな話はついぞ聞かなかったけれど、こちらの世界では経験豊富なのだろう。
そんな男相手に、私が敵うわけがない。
「ああ!」
ついに、身体をくまなく撫で回していた指先が、足を割り入ってあそこに触れた。
やだ。
そう思って身じろぎをしたら、触っていない竜の手が私の肩を押さえつけた。
「は……あ」
怖いのに、恥ずかしいのに、触れられた途端そこは熱く潤んでしびれた。
「や、や、動かさないで……」
ねちゃっと、聞くのも恥ずかしい音がする。
こんなの嫌なのに、どうして私は感じているの?
また唇が重なった。
甘い唾液が混じりあい、また頭がぼうっと霞んだ。竜って唾液が飴のように甘いのかな。
だんだん頭の奥の霞が濃くなってきた。
ジークフリードの指の動きだけが、唇が、体温が、すべてが何故か慕わしいものに思える。
「効いてきましたね」
可愛いものだと彼は言い、今度は恥ずかしい部分に顔を埋めて、敏感になってさらに潤んでいるそこにむしゃぶりついた。
「や─────っ! あぁっ、あ、あ」
目のくらむような甘い痺れに押し上げられ、身体が弓なりにしなった。狂ったように手がシーツを引っかいても、その痺れは次から次へとジークフリードの舌先から流され、身体全体を襲う。アダルトビデオの女の人みたいな声を出すなんて、私じゃない。
ジークフリードの頭を離そうとしたら、かえって強く吸われ、さらに下半身が熱く蕩けた。
嘘だ。
違う、こんなの、ないっ!
でも身体は正直に反応して、与えられる刺激に喜んで……。
頭の中が真っ白になった。
呼吸を荒く繰り返していたら、大きな手が頭を撫でた。
「嘆く必要はありません。感じているのは、私の唾液に含まれた媚薬のせいです。身体を重ねる時そういう成分が分泌できるのですが、多かったのかもしれませんね」
「やだ! かき回さないでっ」
ぐちょぐちょといたずらに男の指が恥ずかしいところをかき回すと、吸い付くようにその部分が指を喰い絞めて動くのがわかる。
身体がびくびくと震えた。
「思い切り感じていたほうが楽です。頃合でしょうか」
ぐったりとして動けない私に、ゆっくりと熱い身体がのしかかって来た。
「あ……くぅ」
痛い。
大きな熱の塊が、狭いそこを抉じ開けていく。上へずり上がったらまたジークフリードに押さえつけられた。
「むり……だよっ」
「大丈夫、半分ほど入りました」
ジークフリードの息がわずかに乱れた。
逃れようとしても動けない。ぐぐ……と、痛みと強い力が入り込んできて、その痛みを逃そうとして固いうろこに覆われた腕を握った。びくりとジークフリードは身体を震わせた。
何か裂けるような感触の後、完全に繋がったのがわかった。
激しい痛みで涙がぼろぼろと零れ落ちていく。
「すみません。媚薬ではどうしても破瓜の痛みは消せないので。もう、大丈夫ですから」
何が大丈夫なのかわからない。
ふわりと温かな何かが繋がっている部分から入ってきて、それが手先や足のつま先、髪の先まで浸透していった。同時に痛みが消えた。
「もう痛くないでしょう……」
嫌につやのある声でジークフリードは言い、先ほどまでの慎重な動きとは打って変わったように、私の身体を激しく揺さぶりながら愛撫を始めた。
その動きに付いていけない。
好きだとか、初めてだとか、脅されたとか、そんなものをはるかに超えた何かが、突然襲い掛かってきたような感覚。
熱いものが動くたびに、甘い痺れと共に、つぎつぎに何かが流れ込んでくる。
「鈴、鈴……っ!」
「は……、ん、ん……あぁっ!」
「もっと感じ……ろ。感じれ……ば感じるほど、……魔力が渡せる……から」
声が怖くなくなっていたから、ぼんやりと目を開けた。するとやたらと熱い眼差しとぶつかった。こんな……切なそうな目、しらない。
「鈴……っ……」
やたらとキスを繰り返すのは、私が好きだからじゃない。
それが契約で必要なことだから。
指先に竜の手が絡むのも、上手に事が終えないと面倒くさいから。
わかってるよそんなこと……。
いやに優しく抱きしめられるのと同時に、こそばゆく熱いものと一緒に、大きな魔力が注がれた。
しぶしぶの行為だったのに、何故かその時、私は確かに幸福だったと思う。