恋愛

見つめないで 第01話

「ちっとも似てないわね……」 丸聞こえのひそひそ声にうんざりする。 そんなの貴方達に言われなくても、二十二年間一緒だった本人……

見つめないで 第02話

つかまれた腕を振り払おうとすると、男はにやりと笑って顔を寄せてきた。 「あんたが周一郎が好きだって、皆にばれてもいいのなら……

見つめないで 第03話

翌日、ホテルから電車に乗ってそのまま旅館へ出勤し、退職するむねをお願いすると、当然のごとくチーフに文句を言われた。そこで……

見つめないで 第04話

できたてのそのホテルは、何もかもが綺麗でとても気持ちが良かった。 オープンしたてで混雑しているけれど、もうすこし日にちが経……

見つめないで 第05話

カーテンの隙間から、朝陽が顔に当たってまぶしい。 目覚めると、隣には忍さんが居て、ずいぶん幸せそうに眠っている。 「わ!」 ご……

見つめないで 第07話

「……よく似てるだろ? 忍の弟のホテルのレストランとさ」 にやにやしながら、早野チーフが私の顔を覗き込んだ。なんなんだろな、……

見つめないで 第08話

疲れきってどさりとソファに寝転がった。やわらかでほんのりあったかくて、とても心が休まる心地がする。 忍さんがいない部屋は、……

見つめないで 第09話

夜、千夏が強く勧めるので、家に泊まることになった。 千夏にしてみたら積もる話があるのだろう。私は大学卒業と同時に家を出てし……

見つめないで 第10話

それから一週間ほど経ったある日、和田チーフに更衣室で呼び止められた。 「三杉さん、貴女、仕事をしてないって言う人がいるんだ……

見つめないで 第11話

忍さんにもう何週間も会ってない。季節は梅雨に入り、じめじめとしたスッキリしない天候が続いていた。清掃する客室の換気も窓を……

見つめないで 第12話

周一郎さんの車に乗り、しばらくは、はじめての二人きりの空間に緊張して、何も言えなかった。しんと静まり返った空気が重い。な……

見つめないで 第13話

「兄弟って言っても、同い年で誕生日も少ししか違わない。幼い頃からずっと比べられてたよ。母親にあいつにだけは負けるなと言わ……

見つめないで 第14話

翌日出社した私は、ロッカーの扉に貼られた、「辞めろ」の貼り紙を見てびっくりした。 なんだこれ……。周囲を見回したけれど、気……

見つめないで 第16話

私は、カードキーを取り上げられ、ホテルの一室に閉じ込められた。 「は…………」 力なく、シングルベッドに突っ伏した。千夏の結……

見つめないで 第17話

いつもの意地悪な忍さんだ。 「原、お前、誰が犯人だと思う?」 お客様を呼び捨てにした忍さんに、私も小寺みちるも驚きを隠せない……

見つめないで 第18話

ホテル翡翠には結婚式事業で建てられた、こじんまりとした白い教会がある。 その教会を、ぐるりと取り囲むように広がっている庭園……

見つめないで 第19話

「はい、千夏の好きなシナモンティー」 私の手渡したマグカップを、千夏は泣きながら受け取り、ぐすぐすと泣きながら啜った。 こん……

見つめないで 第20話

翌日、仕事を終えた私は、夕ご飯の食材を買うためにスーパーに向かっていた。すると、車のクラクションを背後から鳴らされた。 見……

見つめないで 第21話

深い深い闇だ。 千夏が涙を流しながら、私に何かを叫んでいる。千夏の周りは闇なのに、千夏の姿だけは異様にくっきりと明るく見え……