「これは一体どういうこと? レイナルド様は、ソフィア様と別れて、私と結婚すると約束してくださったはずでしょう?」 夢の中の私……
私は俗に言う、天涯孤独の身の上だ。 父と母は想いあう仲だったらしいけれど、とある大企業の跡取りだった父と、普通の家柄の母と……
靖則は、顔だけはいい男だから、目の保養にはなると思う。 だけど心の中は、溝のような汚さで満ち溢れているに違いない。 でもそれ……
営業から回ってきた書類に不備があり、営業部のある4階のフロアに向かっている最中に、見覚えのある姿が目に入ってきて思わず足……
真嗣さんから連絡があったのは、それから数日後だった。当時勤めていた会社で、仕事だった給与計算の処理がちょうど終わって一息……
アパートの部屋に戻ってドアを閉めるのと同時に、携帯端末が鳴った。 見ると真嗣さんだ。まだパーティー中じゃないかな。 出てもい……
それからの私は、真嗣さんの呼び出しに臆することなく応じるようになった。それは沙彩のプレゼントに関する相談だったり、食事に……
夢の中で、私はカンテラのようなものを持ち、夜の暗闇の中を、腰に剣を佩いた男と二人で歩いていた。魔法の壁のようなものが二人……
12月に入って寒さが深まっていた。真嗣さんは相変わらず私をデートに誘ってくれ、私はそれに応えていた。沙彩も靖則も父も、私……
嶋田麻理子は深窓の令嬢で、美しいものに慣れていると、その時まで思っていた。 美しい家。庭。服。おいしい料理。品のある人々。……
コンパの会場は、ひどくうるさくて騒がしい。 結局麻理子は園子の誘いを断りきれず、職場である佐藤邸から離れた、とあるレストラ……
「麻理子、麻理子ったら!」 園子の声で、麻理子は、壁に激突する一歩手前で止まった。高価な花瓶を持って移動していたので、園子……
午後十時、麻理子は貴明の部屋の、隣の控え室に入った。 応接室は静かだ。貴明は在室だが呼ばれる気配はない。あのにやにやの貴明……
頭が少し痛む。 麻理子は、ウォッカなどというアルコール度が高いものを、飲んだのは昨夜が初めてだった。 今日は休みだ。この痛み……
隣の部屋から戻ると、貴明は、また麻理子のベッドに勝手に横たわっていた。ベッドが小さいせいで、かなり足がはみ出しており、な……
「麻理子じゃないか」 搭乗口に向かっていた麻理子は、聞き覚えのある声に振り向いた。 「勇佑お兄様」 仕事なのか、勇佑はきちんと……
ベッドから起き上がった麻理子は、体が重く寒気を感じた。昨日、富良野から大雪山までやってきて、大雪山の中にあるホテルに宿泊……
朝早く遊覧船に乗るため、貴明と麻理子は暗いうちに起き、身支度を整えた。麻理子はすっかり元気になっていて、これなら外気温が……
貴明が運転する車は、羅臼の海岸沿いを走っていた。海風が強く、車全体が衝撃を伝えてくる。朝とはうってかわって、海は白波が立……
平地では晴れて暖かだったというのに、山の中へ入るに従ってだんだん雲が増えて寒くなり、霧がかってきた。そして、摩周湖に着こ……
貴明はエレベーターの前で、麻理子を捕まえようとしたが、もう少しというところで扉が閉まってしまい、間に合わなかった。七階か……
それは同じ沈黙でも、いつもの息詰まるような冷たい沈黙ではなかった。なぜなら、貴明の表情のない顔の裏側に、荒れ狂う嵐のよう……
日高の山中を抜け、緑の牧場が目立つようになった。牛は、白に黒のぶち模様のホルスタイン種の乳牛が多く、中には驚くほど乳房が……
覚えている電話番号を押そうとして、麻理子は躊躇った。 昨日から一人きりになると、公衆電話やホテルの電話の前で、これを繰り返……
深夜、貴明は一人起き上がり、麻理子を見下ろした。 深く眠っている麻理子は、これくらいでは目覚めず、静かに眠っている。 起こさ……
次の日、麻理子はなんだかぐったりして目覚めた。隣の貴明は、すやすやと眠っていて、相変わらず寝顔はずいぶんと可愛い。 静かで……
成田国際空港へ降り立った麻理子は、貴明の後ろについて混雑する搭乗口を抜けたところで、声をかけられた。 「麻理子、おかえり」……
「っあ……あ……」 麻理子は、貴明に貫かれて声をあげていた。 貴明の激しい動きに、ベッドが軋む音が少しうるさい。 密着した腰が……
「嶋田さん、この薔薇はこちらですか?」 「そのテーブルが合わないわね。倉庫から青銅のものを持ってきて頂戴。一番小さな、鳥の……
梅雨時のせいかむしむしとして、車の冷房も湿気をたっぷりと含んでいた。 上品な淡いブルーのスーツを着た麻理子は、両手を膝の上……
開け放たれた障子から涼しい風が入ってくる。東京とは違って山間のこの地域は、湿度がかなり低いらしく爽やかな気候のようだ。微……
佐藤邸では、貴明がかつての灼熱の恋の相手を連れて帰ったため、大騒ぎになった。 特に穂高の存在が人々の興味を引いた。しかし、……
夏に向って陽射しが強くなっていく中、佐藤邸では、麻理子と貴明の結婚式の準備が着々と進められていた。 大々的な結婚式披露宴は……
昼はにぎやかな佐藤邸も、平日の深夜はしんと静まり返り足音ひとつしない。プライベートスペースとなるとなおさらで、麻理子は自……
中庭で自分の部屋に飾る薔薇を切っていた麻理子は、呼びに来たみどりの声に振り返った。 会う約束をしていた亜美が来たのだ。 「そ……
「今日は、恵美の世話はいいから」 数日経ったある朝、食事の時間にそう言われ、麻理子は、貴明が何故そんなことを言うのかわから……
その日も貴明に会う事はなく、夜になり、雅明の言ったとおり貴明は外出したようだった。 結婚式はあと五日後だというのに、こんな……
麻理子。 優しい声は父の三郎だった。リボンのついた制服を着た高校生の麻理子は、庭に面したテラスに居る三郎に呼ばれて、お茶が……
雅明と和紀は部屋を出て行き、貴明と二人きりになった。 言いつけに逆らった麻理子は、恐らくは誰かの結婚式披露宴を抜け出してき……
結局、麻理子達は、翌日の夜まで嶋田邸と警察署に留められた。和紀は勇佑の精神鑑定に立ち会っていて、三人と共に行動しなかった……
女に刺されて数日後、目覚めた時には処置は全て終わっており、麻酔が施されている身体には違和感しか無かった。 一番先に目に入っ……
それから数日後、父が来た。 ノックもなしに入ってきた父は、横になっている私に起きろと命令した。まだ痛む身体を苦労して起き上……
半年に渡る苦しいリハビリが終わる頃、季節は梅雨に入っていた。 靖則はほぼ毎日私のリハビリに付き添い、来るなと言っても頑とし……
退院の日の朝、いつも午後に来る靖則が朝食を取っている間に来た。 「ずいぶん早いわね」 「仕事は休みました」 靖則は私の荷物をち……
そして私は、今の状況下にあるわけだ。 沙彩のシナリオ通り、今日も真嗣さんの会社で白い目で見られながら、仕事をしている。 午後……
あれ以来、ひなりは他社へ出向しており、詳しい話を聞けていない。謎掛けみたいな言葉を残してくれたせいで、物思いが増えた。 そ……
結局、ひなりと私が同じ布団で寝ることになってしまい、窮屈な寝心地で最悪な夜を迎えることになった。 「いいじゃないの。女同士……
朝食を食べ終えて靖則の様子を見に行くと、靖則は既に起きていて、しかも布団を畳んでいた。 「ちょっと、怪我は大丈夫なの?」 「……
ばこんと頭を叩かれ、痛くて目が覚めた。 叩いたのはひなりだった。 「やっと起きた。寝坊にも程があるわ」 「靖則にやられたの! 見……
『今日も美しいね、ジョセフィーヌ』 王宮の廊下で背後から突然話しかけてきたのは、ソフィアの父の宰相だ。初老に入っているとい……
沙彩は部屋を出ていき、その後、真嗣さんは鍵をかけた。 「そんなに怖い顔をしないでください。私と結婚したいって言ってたじゃな……
ものすごい量の前世の記憶がなだれ込んでくる。さすがに辛くてしゃがみこんだ私を靖則が抱き上げて、寝台に腰掛けさせてくれた。……
不意にバリアーが消えた。 「どうしてなの? どうして封印が完全に解けたの? すみれが靖則を許すはずがないのに……!」 沙彩が悔し……
ものすごく疲れる一日だった。 早く家へ帰ろうと北山の屋敷の裏口へあの夢乃に案内してもらった。すると、たまたまそこへ屋敷へ帰……