【美形 恋愛 シリアス ドキドキ 多角関係 失恋 御曹司 強引 官能的 】 あすかは、絶対に振り返らない御曹司の貴明を愛していた。貴明と彼の恋人が結ばれるのを信じ、その日のために日々を生きていた。そんなある日、中宮という男が現れて、あすかを妻にもらうと宣言した。拒否するあすかに、中宮は冷たい笑みを浮かべて言うのだった。「いずれ貴女は我慢が出来なくなる、こんなに愛しているのにどうして振り返ってくれないのかと……」。
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石上あすか メイド。家族愛を知らない。勤務先の御曹司の貴明を愛している。佐藤貴明 大企業佐藤グループの御曹司。あすかを利用している……。中宮武久 佐藤グループと取引のある銀行の銀行員。佐藤圭吾 貴明の義父。

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 愚かだと言われるのはわかっているから、誰にも共感は求めない。 この恋は一方的な私の片想いで、永遠にあの方に届かない。 それでもかまわない。 あの方の心に住む女性を、追い出そうとは思わない。 あの方が幸せになるのなら、私はどんな事でもやって ...

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「石上さん、奥様がお呼びよ」 まただわ。 出そうになるため息を殺して、作業中の手を止め、奥様の部屋に向かった。 お屋敷で仕事をしているのだから、誰彼と呼ばれるのはわかっているけれど、奥様に呼ばれるのが一番好きじゃない。料理長にいびられて、厨 ...

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 藤田さんが寿退職するらしい 素晴らしい縁談だそうで、メイド仲間から花束を貰って、お祝いの中心にいる藤田さんは幸せそうに笑っていたのに、私と視線が絡んだ瞬間にその笑みを消して、恐ろしい目になった。 貴明様に袖にされたのが、そんなに腹が立つの ...

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 貴明様がお見合いをされる。 今までずっとお断りになっていたけれど、さすがに全部が全部断るわけにもいかず、しぶしぶ承知されたもので、恵美様をお忘れになれない方に、ひどい仕打ちだと私は思っていた。 場所は都内の料亭で、お供するようにと言われた ...

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 翌朝、私は中宮の腕の中で目覚めた。 私らしくもなく、あのまま眠ってしまったらしい……。ほとんど初対面の男と、何もなかったとはいえ同じベッドで寝るなんて、我ながら、隙があるにも程があるのではないかしら。 でも。 男達に襲われて、はっきりとわ ...

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「浮かない顔だな」 貴明様のお部屋へ向かう途中、時間が早かったから、すこし立ち止まって中庭の薔薇を眺めていたら、いきなり背後から声をかけられた。 振り向いたら、圭吾様が少し離れた所に立っていらして、私は、ワゴンから手を離して頭を下げた。「貴 ...

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 席を立って反対側から出て行こうとしたら、同じく席を立った中宮に阻まれた。「通してください」「通しません。かけなさい」「貴方は私の上司ではありません」「今帰っても何も解決はしない。貴女方は一度話し合うべきだ」 知ったことを言う。ふざけるなと ...

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 深夜、中宮の携帯電話が鳴った。会話の内容から、仕事がらみのようだ。「すみません、帰らなければ。……一人で大丈夫ですか?」 頷く私に、中宮は申し訳なさそうにしながら、スーツの上着とコートを身につけた。そして、私の頭を優しく撫でて出て行こうと ...

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 人は追い詰められると、本性を現すと言われている。賢い人間だと言われて、慕われていた立派な人物が、いきなり利己的になって自暴自棄になり、ついには己と家族を破滅に追いやってしまったり、一方で、利己的な人間が人を思う行動をはじめ、尊敬を得るよう ...

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 恐れている瞬間が来たのは、翌日だった。 貴明様の遅めの朝食をお持ちしたら、お仕事中のはずの奥様がいらして、私を見るなり、こうおっしゃった。「あら……、ちょうどいいわ、貴女もいらっしゃい」「あの、どちらへ?」「圭吾の部屋よ」「…………」 訝 ...

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 あれ以来、貴明様はお屋敷にお戻りにならない。あんなに、帰るのを厭われていたマンションへ、どんなに時間が遅くても帰っておられるようで、一度も御顔を見ていない。大学やお仕事にはきちんと出られているみたいだけど、お屋敷にだけは絶対にお入りになら ...

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 久しぶりにお会いした貴明様は、一見、前と変わらない印象を受けた。 相変わらずお美しくて、隙のない笑顔を浮かべておいでだ。「久しぶりだね。あすか、元気だった?」「はい。おかげさまで……」 じっと見つめられて気恥ずかしく思い、視線を机の上に置 ...

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 翌朝、恵美様の元からお帰りになった貴明様に、気が済まれましたかと申し上げたら、済むわけが無い、続けるに決まっているだろうと、あっさりおっしゃった。 おそらく昨夜は寝ておられないのに、貴明様は食欲旺盛で、朝食をつぎつぎと食べていかれる。顔色 ...

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 貴明様は、お部屋にいらっしゃらなかった。薄暗いベッドランプがついているだけで、お姿が見えない。サイドテーブルには、半分以上中身がなくなったスコッチが、グラスと一緒に並んでいた。 どこへ行かれたのだろう。 そう思って部屋の外へ出ると、貴明様 ...

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 数週間経った。 貴明様は宣言どおり、マンションから会社へ出勤されている。プライベートスペースの出入りを禁止されておいでなのだ。 ご自分の家なのに入れないとはと思うけれど、それほど圭吾様のお怒りは凄まじい。 当然だ。愛する人を殺されかけて、 ...

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 それからあっという間に日々は過ぎ、私は答えを出せないまま、中宮が北海道へ帰っていってしまった日をカレンダーで見つめていた。 あの男たちの件は、中宮が本当にうまくやってくれたようで、外に出ても出会わないし、電話がかかってきたりすることもない ...

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 部屋へ帰って、早速私は言った。「貴明様、お話があります」「何?」 ボタンを外し始めた貴明様は、不思議そうに振り返られた。 相変わらず御綺麗な方だ。「私は、今日で、このお屋敷を辞めることになりました」「なんでいきなり、そうなったの?」 貴明 ...

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 十年の歳月が過ぎた。 私は、東京から少し離れた地方都市の、少し大きなブックショップの事務をして働いている。 二十九歳になっていた。 当然恋人もおらず、結婚もしていない。物好きな男性が告白をしてくれた時もあったけど、いつも丁寧にお断りしてい ...