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「危ないよ」  持っていた花瓶を落としかけたアミリアを、さっと助けてくれる腕があった。相手を見上げて恐縮する。 「殿下、ありがとうございます」 「母上の部屋へ行くのだろう? ついでだから私が持ってやろう」  王太子に花瓶を持たせるなんてとん ...

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『おかけになった電話は、現在通話中か電源が切られているためお繋ぎできません』 「まじですか……」 森村音夜(もりむらおとよ)、ただいまの現在地は、日本から遠く離れたフランスのシャルル・ド・ゴール空港の国内線エリア。えっと、時間は夜の十九時を ...

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おまけトリップっての、知ってる? キャラメルのおまけみたいに、本命の人と一緒についてきた人間のことよ。 「神子様、今日はとてもお綺麗だったわね」 「うらやましいわ。王太子とご結婚だなんて。あんなに美しい方はそうそういらっしゃらないもの。次期 ...

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私は昔っから王子様がとにかく好きだった。 「くーやーしーいーっ!」 「まだ言ってるの佳奈ってば。ミッドガルドさんはあの陰険秘書のモンなんだって」 「認めないから~。男同士なんていやらしいっ」 「あの人ホモだから仕方ないじゃない」 「違うのっ ...

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「来たよー。例のカッコいい人」 「お、今日も幸せそうだねー」 仕事仲間が言う声に、私は商品補充していた顔を上げた。 転勤なのか最近よく出没する、切れ長の涼しげな目が素敵な長身の男の人と、綺麗な奥さんと可愛いお子さん達。すごいきらびやかで空気 ...

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異世界トリップと言うのものは、本当に心臓に悪いものだと思う。 だって、アパートの部屋をあけるなり、森の中ってのはどうなんだ? 一晩中森の中をさまよい続け、狼に追いかけられるわ(持っていた瓶ビールが狼の鼻に運よく当たって撃退)、この世界の男に ...

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衝撃的なものを目にしてしまった……。 マンションの玄関のドアを大慌てで閉め、そのままそこへへなへなと座り込む。胸の動悸が異様に激しく、痛いぐらいだ。 「……うそ、でしょ?」 それは夜の九時過ぎの会社での出来事だった。 月末締めの給与の入力を ...