石上あすか メイド。家族愛を知らない。勤務先の御曹司の貴明を愛している。 佐藤貴明 大企業佐藤グループの御曹司。あすかを利用し……
愚かだと言われるのはわかっているから、誰にも共感は求めない。 この恋は一方的な私の片想いで、永遠にあの方に届かない。 それで……
「石上さん、奥様がお呼びよ」 まただわ。 出そうになるため息を殺して、作業中の手を止め、奥様の部屋に向かった。 お屋敷で仕事を……
藤田さんが寿退職するらしい 素晴らしい縁談だそうで、メイド仲間から花束を貰って、お祝いの中心にいる藤田さんは幸せそうに笑っ……
貴明様がお見合いをされる。 今までずっとお断りになっていたけれど、さすがに全部が全部断るわけにもいかず、しぶしぶ承知された……
翌朝、私は中宮の腕の中で目覚めた。 私らしくもなく、あのまま眠ってしまったらしい……。ほとんど初対面の男と、何もなかったと……
「浮かない顔だな」 貴明様のお部屋へ向かう途中、時間が早かったから、すこし立ち止まって中庭の薔薇を眺めていたら、いきなり背……
席を立って反対側から出て行こうとしたら、同じく席を立った中宮に阻まれた。 「通してください」 「通しません。かけなさい」 「貴……
深夜、中宮の携帯電話が鳴った。会話の内容から、仕事がらみのようだ。 「すみません、帰らなければ。……一人で大丈夫ですか?」……
人は追い詰められると、本性を現すと言われている。賢い人間だと言われて、慕われていた立派な人物が、いきなり利己的になって自……
恐れている瞬間が来たのは、翌日だった。 貴明様の遅めの朝食をお持ちしたら、お仕事中のはずの奥様がいらして、私を見るなり、こ……
あれ以来、貴明様はお屋敷にお戻りにならない。あんなに、帰るのを厭われていたマンションへ、どんなに時間が遅くても帰っておら……
久しぶりにお会いした貴明様は、一見、前と変わらない印象を受けた。 相変わらずお美しくて、隙のない笑顔を浮かべておいでだ。 「……
翌朝、恵美様の元からお帰りになった貴明様に、気が済まれましたかと申し上げたら、済むわけが無い、続けるに決まっているだろう……
貴明様は、お部屋にいらっしゃらなかった。薄暗いベッドランプがついているだけで、お姿が見えない。サイドテーブルには、半分以……
数週間経った。 貴明様は宣言どおり、マンションから会社へ出勤されている。プライベートスペースの出入りを禁止されておいでなの……
それからあっという間に日々は過ぎ、私は答えを出せないまま、中宮が北海道へ帰っていってしまった日をカレンダーで見つめていた……
部屋へ帰って、早速私は言った。 「貴明様、お話があります」 「何?」 ボタンを外し始めた貴明様は、不思議そうに振り返られた。 相……
十年の歳月が過ぎた。 私は、東京から少し離れた地方都市の、少し大きなブックショップの事務をして働いている。 二十九歳になって……